北日本病害虫研究会年報
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TUZ剤 (モンゼツト) による稲紋枯病の防除に関する試験
深津 量榮柿崎 正平山 成一
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1958 年 1958 巻 9 号 p. 166-183

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抄録

本報告には昭和32年度施行のTUZ剤モンゼツトによる稲紋枯病防除に関する試験成績を述べた。その概要は次のとおりである。
1. モンゼツト2,000倍石灰加用液および同3%粕剤の散布適期を知ろうとした。その結果出穂12日前 (初発生後約2週間) および5日前 (発病盛期, 穂孕期) の2回散布は前年同様著しく高い防除効果を示した。5日前1回散布の効果も著しく高く, 2回散布に匹敵したが, 12日前1回散布はやや劣つた。発病初期の散布によつて持続効果を期待するよりも, 発病盛期にその強力な殺菌力を直接発揮させるような使用法が有利と思われる。
2. 2,000倍単用液, 同石灰加用液および3%粉剤の穂孕期1回散布の経済効果を検討した。供試3農薬はともに発病抑制力顯著で優劣はなく, 薬害による減収もほとんどなく, 軽度発病田への散布でも直ちに増収が期待された。しかし本病による減収量は他病におけるほどに大きくはないので, これらの散布によつて真の経済効果をあげるためには, かなり高い発病率を示す水田に限る必要があろう。穂孕期の病茎率10%位がその限界と思われる。
3. モンゼツトと水銀剤, BHCおよびパラチオン剤の液剤または粉剤との混用によつて, モンゼツトの紋枯病に対する防除効果は全く影響を受けることなく, また水銀剤のイモチ病防除効果, BHC, パラチオン剤のニカメイチユウ防除効果にも影響はなかつた。それぞれの薬剤の薬害が混用によつて特に著しくなることもなかつた。供試農薬の範囲内では, 混合散布はなんら差支えないようである。
4. モンゼツト粕剤の上方からの散布は, 株元散布にくらべて遜色なく, 充分実用できるような結果が得られたが, 液剤の上方散布はやや劣つた。
5. モンゼツト散布は, 発病を強く抑制するのみでなく, 病斑上の菌核の形成をほとんど完全に阻止するので翌年の発病も著しく軽減させる。

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