北日本病害虫研究会報
Online ISSN : 2185-4114
Print ISSN : 0368-623X
ISSN-L : 0368-623X
有機燐殺虫粒剤のバレイシヨのアブラムシならびに葉巻病に対する効果
今林 俊一堀口 治夫
著者情報
ジャーナル フリー

1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 55-62

詳細
抄録

有機燐殺虫粒剤の土壤施用法によるバレイショのアブラムシ防除試験を1962年から実施し, つぎのような成績を得た。
1) 北海道で栽培されるバレイショには, ジヤガイモヒゲナガアブラムシ (Aulacorthumm solmi), モモアカアブラムシ (Myzus persicae) およびワタアブラムシ (Aphis gossypii) の3種寄生するが, 葉巻病ウイルスは前2者によつて伝搬される。
2) ジヤガイモヒゲナガアブラムシはバレイショの開花期まで漸増するが開花以後は減少しはじめ, モモアカアブラムシがこれにかわつて優位を占めその盛期は開花後およそ20日前後である。
3) アブラムシの寄生密度は早生種 (男爵) に多く, 晩生種 (紅丸, 農林1号) に少ない傾向が認められた。地域的には, 道南地帯が密度が高く, 中央部地帯, 北見地帯とバレイショの成育の遅れる地帯ほど寄生時期が遅くその寄生密度も低くなる。
4) バレイショの播種時に施肥帯に作条施用して有効な有機燐殺虫粒剤は, エチルチオメトン粒剤 (エカチンTD・ダイシストン), PSP-204粒剤, ジメトエート粒剤であつた。
エチルパラチオン乳剤の7回継続散布に匹敵する効果をあげる10a当りの有効成分施用量は, 琴似圃場における小区画試験の場合, エカチンTD粒剤が250g, PSP-204粒剤が450g附近であつた。しかし, ジメトエート粒剤はバレイショの成育後期にアブラムシが急増したのでその有効施用量は判然としなかつた。
5) エカチンTD, PSP-204, ジメトエートの各剤を化成肥料と混合しバレイショの播種時に作条施用すれば, これら単剤施用と同等の効果をあげ, しかも, バレイショの発芽, 生育に対する影響がなく, 肥効の面でも何ら差支えなく実用的であつた。
6) 土壤施用効果は小圃揚の単独防除よりも広域防除の方が遙かに有効である。エカチンTD, PSP-204, ジメトエート各剤ともに単剤, 化成肥料との混和剤いずれも0.5ha以上の広域土壤施用であれば, 有効成分量として240~300g施用 (10a当り) でバレイショの全成育期間アブラムシの寄生を殆んど許さず, 葉巻病の発生も極めて低率に抑えることができた。
7) 土壤の種類によつて殺虫剤の吸着性に差異のあることが認知されるので, 土質条件と殺虫剤の有効施用量との関連解析が問題点として残されている。
8) 土壤施用剤として有効な薬剤を土壤施用した場合, その圃場の周囲・環境条件によつてはバレイショの成育後期にアブラムシが侵入増殖することがある。
これによつて発生する葉巻病を防止する手段としては, 従来から行なわれてきた発病株の早期抜きとりと播種2カ月以降の薬剤による茎葉散布も必要である。

著者関連情報
© 北日本病害虫研究会
前の記事 次の記事
feedback
Top