北日本病害虫研究会報
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青森県におけるニカメイチュウの発生と被害の動向
藤田 謙三土岐 昭男
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1969 年 1969 巻 20 号 p. 148-156

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抄録

1. 第1回成虫の発生消長は栽培様式が変化しても大きな差はなく, 2回目成虫の発蛾時期が早まったにすぎない。発生量は保護苗代の普及による早植, 多肥栽培の増加とともに漸増した。
2.保護苗代の育苗技術は, 田植期を10日以上早め, かっ多肥栽培を可能にし, そのためニカメイチュウの発生を増加させるとともに分布を拡大させ, 被害程度を増大したものと思われる。
3.青森県における発生型は次の4型に分けられる。2化期部分型A型: 1回日成虫の初発期が早く, 発蛾期間が長い。また2回日成虫の発生量も多い。
B型: 2回目成虫の発生量はA型とほぼ同数だが, 1回日成虫の発生量は発蛾最盛期附近に集中する。
1化型C型: 発蛾時期がおそく, 発蛾量が少なく, ほとんど1回発生に終る。
D型: 発蛾が散発的にみられ1回発生に終る。
4. 田植時期と幼虫の発育についてみると, 早植では遅植より蛹化前期間が短縮する場合が多いが, 普通植よりは延長する場合もあることが認められる。
5. 田植時期と被害についてみると, 遅植に比し早植, 普通植は明らかに被害が大きい。早植と普通植とは稲の生育状況により被害程度が左右されるようである。
6. 施肥量と被害にっいてみると多肥栽培では, いずれの場合でも被害の増加がみられ, 深層追肥栽培においても全量基肥区より被害が多くなる傾向がある。
7. 青森県における被害面積率, 推定減収量は県平均で2回散布が行なわれるようになってから急激に低減し, 早植栽培の達成に大きな役割を果たしたものと思われる。
8. 青森県の平均収量から経済的防除効果を求めると5%前後に被害茎率を防止しなければ経済効果は得られないものと推察される。

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