北日本病害虫研究会報
Online ISSN : 2185-4114
Print ISSN : 0368-623X
ISSN-L : 0368-623X
エンバクおよびイネ科牧草の冠さび菌とその中間寄主植物について
成田 武四
著者情報
ジャーナル フリー

1972 年 1972 巻 23 号 p. 25-38

詳細
抄録

1) エンバク冠さび菌の冬胞子 (小生子) をクロウメモドキの葉に接種し, これにさび柄子殻およびさび胞子層を生成させることができた。
2) 21属46種のイネ科植物にクロウメモドキ上のさび菌さび胞子を接種して8属10草種に夏胞子層を生成させることができたが, これらはすべて冠さび菌であった。
3) これら冠さび菌はイネ科植物特定10草種に対する寄生性の差異によってエンバク菌, ライグラス菌, イワノガリヤス菌およびヤマカモジグサ菌の4者にわけられた。
4) クロウメモドキ上のさび胞子には感染しなかったが, リードカナリーグラスおよびケンタッキーブリュグラスに冠さび病の自然発生が認められた。
5) これらの冠さび菌6種の寄主範囲はそれぞれ異なり, エンバク菌にはエンバク, カズノコグサ, オーチャードグラスおよびチモシー, ライグラス菌にはライグラス類, イワノガリヤス菌にはイワノガリヤス, リードカナリーグラス菌にはリードカナリーグラス, ヤマカモジグサ菌にはヤマカモジグサ, アオカモジグサ, カモジグサ, スレンダーホイートグラス, インターメデイエートホイートグラス, ソフトブロームグラス, オオムギ, ライムギなど, ケンタッキーブリュグラス菌にはケンタッキブリュグラスがそれぞれ罹病性~中度抵抗性の反応をしめした。
6) 夏胞子, 冬胞子の形態, 冬胞子層裸出の状態などにおいて, エンバク菌とライグラス菌とはほとんど差異がなく, イワノガリヤス菌とリードカナリーグラス菌とはほとんど区別できない。エンバク菌などに比してイワノガリヤス菌などの夏胞子は小形で, 冬胞子の角状突起は短く, 鈍頭状を呈し, 冬胞子層は早く裸出する。ヤマカモジグサ菌およびケンタッキーブリュグラス菌は夏胞子の大きさ, 冬胞子裸出状態ではイワノガリヤス菌などに同じであるが, 冬胞子角状突起の状態はエンバク菌などに近いものが多い。
7) 菌の形態, 寄生性などを総合すると, これらの冠さび菌を異なる形態種または変種とみるよりも, 集合種P. coronata Cordaの生態種, すなわちそれぞれf. sp. avenae, f. sp. lolii, f. sp. calamagrostis, f. sp. phalaridis, f. sp. brachypodii, Sp. poae-pratensis としてとり扱うのが妥当と思われる。

著者関連情報
© 北日本病害虫研究会
前の記事 次の記事
feedback
Top