1972 年 1972 巻 23 号 p. 39-44
レース分布を支配する要因を明らかにするため, 菌糸発育温度のレース間差異および採集地間差異を検討した。
1 培地上における菌糸発育の上限, 下限温度および適温範囲を同一時に測定出来る方法として, 温度勾配培養槽の利用を試みた。
2 菌糸発育の上限温度については, 次のようなレース問差異が認められた。
高←C-3 T-2 C-8 N-2 N-1 C-1 C-6→ 低
注) 同一線上のレース間に有意差 (0.05) なし
3 菌糸発育の適温範囲については, 次のようなレース問差異が認められた。
広←T-2 C-8 C-3 N-2 N-1 C-1 C-6→ 狭
圃場におけるいもち病発生時期の温度条件を考えた場合, T-2, C-8, C-3, N-2の適温範囲がC-1, C-6のそれより広く, しかもその差が26℃ 以下の温度において顕著である事は, 前者を優勢化させ得る1要因となるであろう。
4 山形, 愛知, 大分の各県から採集されたN-2, C-8について菌糸発育温度の採集地間差異を検討したが, 地理的差異はほとんど認められなかった。