北里大学一般教育紀要
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原著論文
コーパスを用いた類義語の研究
-apparentlyとseeminglyを事例として*-
中村 文紀
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2017 年 22 巻 p. 43-58

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抄録

 英語には、類義語が豊富に存在する。類義語は、性質上類似性について言及されることが多いが、同様に興味深いのは、類語には微妙な差異が存在することである。しかし、この差は、潜在的な知識であり、母語話者が意識的に引き出すことは難しい。本稿では、実際の言語使用であるコーパス内を調べることで、この差異についての分析を深めていく。

 実際に調査を行うのは、apparentlyとseeminglyである。これらは、多くの先行研究で類義語であることが記述されている。しかし、その使い分けや分布の違いについての記述はほとんど見られない。

 コーパスは、実際の言語使用を収集したデータベースである。類義語の違いは、実際の使用における分布として顕れてくるため、コーパスを用いた調査は、類義語研究に有益である。本研究では、イギリス英語の大規模コーパスであるBYU-BNCを用い、その生起位置の違いと共起する要素の比較・対照を行った。

 調査の結果、apparentlyとseeminglyには、以下の二点が異なっていた。第一に、apparentlyは、文の周縁部に生起し文を修飾する傾向があることに対して、seeminglyは、文の内部に生起する傾向があることである。第二に、apparentlyは動詞と共起する傾向があるのに対して、seeminglyは形容詞と生起する傾向がある。ここから、apparentlyは、文レベルあるいは談話レベルの要素を話し手が肯定的な態度を取っていることを表すのに対して、seeminglyはより否定的な態度を表していることが明らかになった。

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