北里大学一般教育紀要
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原著論文
台湾における英語教育の実証的研究
-学習指導要領準拠版(1983年~2008年)高等学校英語教科書の題材内容の研究から-
平井 清子
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2017 年 22 巻 p. 67-101

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抄録

 本研究は、台湾の戦後から現在までの英語教育の変遷と特徴、そして、その要因を、比較教育学の観点から、社会・文化的、政治・経済的、歴史的背景から考察する研究の一部である。台湾では、戦後70年間(1945年~2015年)に6つの学習指導要領が発布された。本稿では、このうち、1983年以降に発布された3つの学習指導要領に準拠した高等学校英語教科書の、それぞれ高校3年間分の教科書(全42冊)の各章(全502章)で扱われている題材内容を、日本十進分類法(NDC)に基づいて分類し、その結果を質的特色に考慮して分析・検討することによって、特徴とその要因を実証的に明らかにする。本研究目的は以下のようになる。

1) 現代の台湾高校英語教科書で扱われる題材内容の内容構成の特徴を、歴史的観点から明確にする。さらには日本の英語教育に応用できる側面を明らかにする。

2) 台湾の高等学校英語教科書の題材内容が、どのような社会・文化的、政治・経済的、そして歴史的背景や要因によって編纂されてきたかを明らかにする。

台湾の教科書の題材内容の特徴が、今後、日本の英語教育にどのような示唆を与えるかについては、1983年版の教科書から2008年準拠版に至るまで変わらず、とりわけ1995年以降は、実用英語を重視しつつ「文学」的素養の人間教育を重んじ、これらを両輪としていることが上げられる。比較教育学の観点からは、1980年代からの民主化、自由化の動きが、その後、1987年に戒厳令解除後の1990年代後半からは「本土化」の動きが、教科書の題材内容に反映されていることが実証的に確認された。その他、経済、社会、歴史、イデオロギーの観点からの影響も、台湾の複雑な民族国家の要因や歴史的な経緯と絡み合い、教科書の題材内容の選択に影響を与えていることが明らかとなった。

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