2018 年 23 巻 p. 75-87
高い熟達度を持った二言語話者はその二言語を各々巧みに操ることができるが、同じ言語背景を持つ二言語話者同士の会話内では、しばしば言語切り替えが見受けられる。本研究では、日常第二言語を使用する機会のある後期二言語話者を被験者とし、言語切り替えタスクによる行動実験でどのような発話機能を働かせるかを観察した。実験では、15人の日本語を母語とする後期二言語話者が参加した。全ての被験者は12歳以降に英語を学習し、現在では英語を使用する専門職にいる。実験では、日本語と英語の質問に対して、同様の言語で急速に画像を呼称するというタスクを行った。その結果、被験者は英語での返答が日本語よりも早かった。この結果は、被験者が母語よりも第二言語に注意を向けていたことが母語での返答を遅くしたと推定される。この結果を考慮して、言語切り替えに関わる後期二言語話者の発話過程のモデルを提案した。