抄録
本論文の目的は、設計的思考という方法論が倫理学と教養教育に関して重要な意味を有するという点を明確にすることである。まず、設計的思考が、倫理問題を解決するための方法論であることを指摘し、方法論としての設計的思考が求められる背景について述べる。次に、設計的思考の4つの特徴を次の順に説明していく。(1)多様な制約条件の間には複雑な関係性があるため、その対処策としてトレード・オフという方法を採用する。(2)制約条件の1つとして倫理的要素があることを主張する。(3)複数解と解欠如を容認する。(4)問題に直面した行為者の視点に基づく。この4つの特徴を明確にすることによって、設計的思考が実践的な方法論であることが示され、倫理学が日常で役割を有するとするなら、設計的思考に学ぶ必要があるという点が指摘される。最後に、設計的思考は問題解決のための実践的技術であり、その点に教養教育との繋がりがあることが明らかにされる。