2017 年 65 巻 9 号 p. 267-273
近年,地球観測衛星や天文衛星は,その観測性能の高まりとともに,非常に高い指向精度が要求されている.これら高精度観測が求められる衛星の指向精度を実現する上での問題の1つが,衛星内部に搭載されるアクチュエータの駆動により生じる微小擾乱である.人工衛星は,軌道上初期運用で指向精度要求を満たさないことが判明しても改修不可能であるため,地上試験にて観測性能を保証することが不可欠である.この観測性能保証のキー技術が指向精度評価技術である.この評価において重要な要素技術が指向誤差計測である.この計測には,軌道上境界条件の模擬,開発早期に試験可能であること等が要求される.これら要求を満足する方法として,慣性計測方法が知られている.しかしながら,この測定精度については,これまで十分に議論されていなかった.本稿では,慣性計測方法の精度に関する検証結果について紹介し,この慣性計測方法が高精度観測衛星の指向誤差計測方法として有効な方法であることを述べる.