将来の衛星内機器間の通信をワイヤレス化するための要素実証として技術試験衛星9号機(Engineering Test Satellite-9: ETS-9)にワイヤレス通信用モジュールを搭載して軌道上実証を進める計画である.本稿ではワイヤレス化の目的を概説した上でワイヤレス通信モジュールの機能性能概要を解説し,地上での検証結果,及び軌道上で予定している実証計画を紹介する.また,将来的なワイヤレス通信の高性能化,高度化に向けた課題も述べる.
2020年3月,JAXAは,日本由来のデブリのうち大型デブリを対象に,観測・特性評価・最終的な除去を目的としたCRD2プログラム フェーズⅠの契約相手方としてアストロスケールを選定したことを発表した.このミッションでは,H-ⅡAロケット上段へのRendezvous,近傍接近を行い,デブリの特性をより深く理解するためのデータを取得することを目的としている.このフェーズⅠのミッションを実施する「ADRAS-J(Active Debris Removal by Astroscale-Japan)」衛星は,2024年2月18日に打ち上げられ,非協力物体であるデブリに対してRendezvous,近接接近および近接運用を完了し,長期間軌道上に存在するデブリの画像を取得した.これにより,デブリの運動や表面の経年変化の状況が明らかになり,将来的にこのデブリを捕獲・除去するフェーズⅡミッションにおけるリスク低減に大きく貢献し,非協力物体に対するRPO(Rendezvous and Proximity Operation)技術を実証した.本稿では,ADRAS-Jミッションの運用計画とその実績について説明する.
1987年に打ち上げられた海洋観測衛星「もも1号(MOS-1)」は,日本で最初の,自主技術開発による地球観測衛星である.このプロジェクトにより,衛星リモートセンシングシステムの開発,運用,データ利用,ならびに,観測センサの開発,衛星バスの開発,運用に関わる技術を我が国自身の技術・経験・ノウハウとして獲得し,その後の地球観測プロジェクトへと繋ぐ重要なマイルストーンとなった.当時の米国や欧州の観測センサと比肩し得る性能を有する可視から電波に及ぶ3種類の観測センサ(MESSR, VTIR, MSR)の開発と運用,国際的なデータ受信網の設置,太陽同期準回帰軌道への投入と保持,高精度三軸姿勢制御の実現などにより,日本が宇宙開発において高い技術を持つことを世界に証明し,国際的な宇宙開発コミュニティにおいても重要な役割を果たす基盤を築いた.この功績により,航空宇宙技術遺産第三号として認定された.