日本航空宇宙学会誌
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特集 デトネーション燃焼の航空宇宙推進への適用 第3回
回転デトネーションの燃焼安定・不安定性の光学手法による観測
小島 淳布目 佳央川島 秀人丹野 英幸沖田 耕一水書 稔治
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2023 年 71 巻 1 号 p. 9-16

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抄録

RDE(回転デトネーションエンジン)は,比較的単純な構造ではあるが,高い燃焼圧力を発生させることが可能で,次世代航空宇宙用エンジンとして期待されている.RDEは,ある運転条件下では安定した波数・伝播速度で安定した燃焼特性を示すことが多くの実験で確認されており,現在は回転デトネーション現象の解明を目的とした基礎研究よりも,エンジンの実用化を目指した開発研究が主流となっている.しかし,回転デトネーションの安定燃焼条件は多分に経験則で決まっており,条件予測理論が確立されているとは言い難い.条件の予測に必要な燃焼現象の解析を妨げている原因の一つに,燃焼器内の熱負荷が格別に高く,接触型センサである圧力変換器や熱電対がすぐに焼損してしまうため,精度の高い計測データを提供できないことが挙げられる.本研究では,回転デトネーションの観察に光学計測技術を適用した.高速ビデオ撮影によって回転デトネーション波の波数と伝播速度を,CHラジカル発光により燃焼状態を,PSI(位相シフト干渉法)により回転デトネーション波の詳細構造を把握した.燃料総流量,当量比,インジェクタ形状(衝突型,非衝突型),燃焼器出口スロートの有無等の主要パラメータを変えたパラメトリック燃焼試験を実施した.今回の研究で,以下の傾向が確認された.(1)高流量域で安定した回転デトネーション波が発生する傾向がある.(2)出口スロート無し構成の燃焼器は,安定した回転デトネーション波が発生する傾向がある.(3)噴射形態の影響は明確で,衝突噴射孔の場合は安定した回転デトネーションが観測された.上記の結果は独立した事象ではなく,燃料と酸化剤の混合過程と密接に関係していると考えられる.また,本研究で適用したPSI光学観測技術は,回転デトネーション波の構造を解析するための強力な観測ツールであることが証明された.

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© 2023 一般社団法人 日本航空宇宙学会
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