2023 年 71 巻 11 号 p. 298-304
近年の航空交通流増加に伴い,効率的な運航の重要性が増している.到着空港が混雑により到着可能な容量を超過する場合,着陸可能な便が上空にいても着陸することができず,空中で待機することになる.そのような空港の需要と容量のバランスを保つために,航空交通流管理(Air Traffic Flow Management, ATFM)が行われる.航空交通流管理では,空中での待機が見込まれる便に対し,地上待機時間や空中待機時間といった遅延時間を指示することにより到着空港の混雑を緩和する交通流制御を行う.交通流制御のための主な制御パラメータは空中待機バッファと呼ばれる空中待機時間の上限値である.このバッファは現状,管制官の経験に基づき設定されているが,必ずしも最適な値とは限らない.本稿では,ATFMシミュレータによる最適な空中待機バッファを算出する研究を紹介する.本研究では不確定性を考慮した交通流シミュレーションを実施し,空中待機による燃費と空港の容量のバランスを考慮した定量的な指標に基づき最適なバッファ値を算出することを提案している.