2026 年 74 巻 4 号 p. 125-129
2020年3月,JAXAは,日本由来のデブリのうち大型デブリを対象に,観測・特性評価・最終的な除去を目的としたCRD2プログラム フェーズⅠの契約相手方としてアストロスケールを選定したことを発表した.このミッションでは,H-ⅡAロケット上段へのランデブ,近傍接近を行い,デブリの特性をより深く理解するためのデータを取得することを目的としている.このフェーズⅠのミッションを実施する「ADRAS-J(Active Debris Removal by Astroscale-Japan)」衛星は,2024年2月18日に打ち上げられ,非協力物体であるデブリに対してランデブ,近接接近および近接運用を実施し,世界初となる「非協力物体である大型宇宙デブリへの超近接観測ミッション」を成功させた.ミッションを通じて得られた長期間軌道上に存在するデブリの画像により,デブリの運動や表面の経年変化の状況が明らかになり,将来的にこのデブリを捕獲・除去するフェーズⅡミッションにおけるリスク低減に大きく貢献し,非協力物体に対するRPO(Rendezvous and Proximity Operation)技術を実証した.本稿では,ADRAS-Jプロジェクトの技術的背景,運用コンセプト,ミッションの結果に焦点を当てる.