北関東医学
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症例報告
術後Abdominal Compartment Syndromeを生じた血管炎による多発性動脈瘤の1治験例
行木 太郎大滝 章男上吉原 光宏篠原 正彦石坂 浩加藤 清司菅谷 壮男奈良 岳志井手 政信中野 実高橋 栄治森下 靖雄
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2005 年 55 巻 4 号 p. 375-379

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抄録
症例は57歳の男性で, 微熱と左腰背部痛を主訴に近医を受診し経過観察下にあった, 時折, 38度台の発熱, 多発性の口内炎, 両下肢の結節性紅斑様皮疹がみられ, 約3ヶ月後に強い左腰背部痛のため尿管結石の疑いで他院に入院した. 腹部CT精査で, 左腎動脈付近の動脈瘤切迫破裂の疑いで本院へ転院した. 血液データ上, 炎症性疾患の存在が示唆されたが, ショックや臓器障害等の敗血症様所見はなかった. 細胞質性抗好中球細胞質抗体価 (PR3-ANCA) と抗好中球細胞質ミエロペロキシダーゼ抗体価 (MPO-ANCA) はともに陰性で, 抗核抗体や抗細胞質抗体も陰性であった. 造影検査で, 左腎動脈に直径約4cmの嚢状瘤を認め, 経カテーテル的ステント留置プラスコイル塞栓術を行った. 8週後のCT再検で左腎動脈瘤は拡大していたため部分体外循環補助下胸腹部大動脈パッチ形成プラス左腎動脈再建術を行った. 術後24時間目に突然のショックと腹部膨隆を来し, 緊急カテーテル検査で径約1cm大の脾動脈瘤の破裂と判明した. 脾動脈塞栓術により緊急止血を得た後, 腹腔穿刺を行ったところ約10,00mlの血液が排液され, 循環動態は安定化した. Abdominal Compartment Syndromeにともなう腹部臓器虚血により肝・腎・膵・腸管機能不全を併発したが, 血液透析などの集学的治療により改善し退院となった.
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© 2005 北関東医学会
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