抄録
症例は61歳男性で, 高血圧・高脂血症・糖尿病にて近医で加療されていた. 胃の不快感・腹満感が出現し, その後に嘔吐・食欲低下が出現した. 体重は数ヶ月で10 kg程度減少し, 精査したところ腹部CTで胃前庭部の腫瘍を発見された. 手術目的で当科を紹介受診した. 胃癌T3, N2, H0, P0, cStageIIIBの診断で手術施行するも, 腹腔内播種を認めたため試験開腹となった. 術後は外来でPaclitaxel (PTX)+Doxifluridine (5'-DFUR) (PTX : 80mg/m2+5'-DFUR : 533mg/m2) による化学療法を施行し, 9か月間は再発徴候がなかった. 12コース施行後の画像診断でやや改善を認めたため, 腹腔鏡で観察を行った. 肉眼的に腹膜播種は消失しており, 洗浄腹水細胞診でCY0であった. 引き続き開腹で根治的胃全摘術を施行した. 術後はPTX+5'-DFUR併用療法を再開した. 腹膜播種を伴う根治切除不能胃癌に対してPTX+5'-DFUR併用療法により根治切除が可能となり, 良好なQOLを保つことができている.