抄録
症例は71歳女性. 胃癌で2006年12月に腹腔鏡補助下幽門側胃切除を施行した. 病理診断はL領域深達度sm2及びM領域深達度mの2重癌であったが, いずれもStageIAであり, 外来で経過観察していた. 正常であったCEAが2009年5月に17.0ng/mlと上昇した. 再発を疑い精査を行ったが, 再発形式の確定診断ができなかった. その後もCEAの上昇は止まらず, TS-1とcisdiamine dichloroplatinum (CDDP) の併用療法を8月より開始した. 化学療法は奏功しCEAは徐々に減少した. 4クール目が終了した12月より貧血の進行があり, 2010年1月に上部消化管内視鏡を行ったところ, 吻合部に易出血性の腫瘍があり, 残胃全摘を行った. 病理検査でAFPの免疫染色が陽性であり, 残胃全摘直前の血清AFPも71.6ng/mlと上昇しておりAFP産生胃癌の診断となった. 初回手術のL領域病変の一部でAFP免疫染色が陽性であり, 同部の再発と診断した. 残胃全摘後は血清CEA, AFPの値は共に正常化した. 退院後はTS-1を内服していたが2010年7月に肺転移再発し, 全身化学療法を継続中である.