北関東医学
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症例報告
切除標本内に陳旧性日本住血吸虫卵が多数みられた大腸憩室穿孔の1例
塚越 浩志堤 裕史岩崎 茂倉林 誠竹吉 泉
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2012 年 62 巻 2 号 p. 153-157

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抄録
症例は78歳, 男性. 戦時中に4年間の中国在住歴あり. 2010年7月, 突然の左下腹部痛で近医を受診した. CT検査で腸管外へのバリウムの流出が疑われ, 穿孔性腹膜炎の疑いで当院に紹介された. 搬送時, 腹部は板状硬で左下腹部に圧痛及びBlumberg徴候を認めた. 消化管穿孔による汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した. 腹腔内は汚染腹水が中等量あり, SDjunction付近のS状結腸に憩室が多数存在し, 同部位に穿孔部を認めた. 穿孔部を含め汚染部を10cmほど切除し単孔式人工肛門を造設. 腹膜に広範に付着したバリウムを可及的に除去した. 術中より血圧の低下があり, 敗血症性ショックと考えエンドトキシン吸着療法を施行した. 第3病日より血圧が安定し, 以後順調に回復して第35病日に退院した. 切除標本の病理組織検査では, 粘膜下層から漿膜下層にかけて, 直径40-70μmの石灰化した卵円形異物を多数認め, 陳旧性日本住血吸虫卵と診断された. 虫卵に活動性の炎症は伴われていなかったが, 虫卵が多く見られる部位の組織が脆弱化し, 出血と炎症を伴い, 憩室の存在も重なって穿孔に影響を与えた可能性が示唆された.
日本住血吸虫症は近年, 海外輸入例の報告も散見され, また, 本例のように陳旧性例に遭遇する例も依然としてみられる. 若干の文献的考察を加えて報告する.
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© 2012 北関東医学会
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