北関東医学
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原著
頭頸部癌における酸化ストレスの評価
高橋 克昌高安 幸弘近松 一朗
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2016 年 66 巻 2 号 p. 117-121

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抄録

背景・目的:生体において酸化と抗酸化のバランスが崩れ, 活性酸素が蓄積する状態を酸化ストレスと言う. 癌や感染症では, 白血球の産生する過剰な活性酸素のために酸化ストレスが蓄積する. 癌の治療前後で酸化ストレスの状態を評価し, 白血球との関連を検討した.
対象と方法:10名の頭頸部癌患者の抗癌剤投与前・後と回復期において, 血清中の酸化ストレス (dROM, diacron-Reactive Oxygen Metabolite) と抗酸化力 (BAP, biological antioxidant potential) を測定した. 10名の中耳炎患者の手術前・後と回復期で同様の測定をし, 両者を比較検討した. dROMは活性酸素により酸化された血清のヒドロペルオキシド濃度で, 酸化ストレスの指標とした. BAPは血清が還元した3価の鉄イオンを含む呈色液の濃度で, 抗酸化力の指標とした.
結 果:癌は中耳炎と比較して有意にdROMが高値を示した. BAPは両者に差を認めなかった. 治療によって癌ではdROMが変化したが, 白血球数の減少と一致しなかった. 中耳炎ではdROMは一定で, 白血球数の増加に伴った変化も認めなかった.
結 語:中耳炎の手術前後でdROMが上昇しなかったことから, 局所炎症や全身麻酔手術程度では酸化ストレスと抗酸化力のバランスが崩れないと考えた. 逆に治療前から高いdROMを示した癌は, 常に強い酸化ストレス状態にあると推測された. 治療により白血球が減少してもdROMの低下は伴わず, 白血球以外で活性酸素を放出すると考えられた.

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