北関東医学
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原著
群馬大学医学部附属病院の通院HIV感染者に対するアンケート調査
- 患者ニーズに寄り添う地域社会における包括的HIVケア体制の構築を目指して -
小川 孔幸柳澤 邦雄中村 聡洋小林 瑞枝石﨑 芳美兒玉 知子干川 孔明田子 明弘合田 史林 俊誠澤村 守夫内海 英貴野島 美久半田 寛
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2017 年 67 巻 2 号 p. 135-141

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抄録

【背景・目的】 抗HIV療法 (antiretroviral therapy: ART) の進歩によりHIV感染者の生命予後は劇的に改善した. その結果として, 長期生存者数の増加と高齢化に伴う日常的な合併症に対する地域連携や就業上の問題, 維持透析や療養の場の確保といった患者居住地域で完結すべき諸問題への対応が喫緊の課題となっている. 群馬大学医学部附属病院 (以下当院) には2016年9月時点で140名余りのHIV感染者 (含AIDS発症者) が定期通院している. その多くは, 県内一円の居住地から当院への遠距離通院を余儀なくされている. 当院通院患者の居住地域における医療ニーズを把握し, 今後の本県の施策に反映すべく, アンケート調査を実施した. 【対象と方法】 当院外来を通院している日本人のHIV感染者を対象とし, 匿名, 選択肢回答および自由記載式の調査票を配布した. 2015年4月から11月末までに90名へ配布し, 83名から回答を得た.
【結 果】 当院への定期通院を困難に感じている患者は23%で, 同数が居住地域でARTの定期処方を希望した. 66%の患者がHIV感染の診断後に他院を受診しており, その内訳は, 歯科, 一般内科, 皮膚科診察が多かった. しかし, 約70%はHIV感染を未告知で受診しており, その理由は, 「診療拒否されたくない」, 「HIV感染を知られたくない」, 「差別が怖い」であった. また, 過半数の患者が慢性疾患の診療や維持透析, 歯科治療について居住地域の医療機関で診療を受けることを希望した. 将来的な居住地域での訪問看護サービス (76%) や介護施設 (56%) の需要は高く, さらに, 多くの患者が居住地域で医療・介護施設が受けられない場合は差別と感じ, 差別是正のために行政への働きかけを希望した. 【結 語】 本研究の結果を群馬県HIV診療ネットワーク構築の資とし, 地域社会における包括的HIVケアの環境整備をより一層推進していきたい.

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