2020 年 70 巻 1 号 p. 31-35
症例は70代男性.17年前より慢性腎不全による血液透析を行っている.X年4月より器質化肺炎にてステロイド治療を開始.6月よりニューモシスチス肺炎となり入院加療中.7月に突然の発熱と腹部の膨満を訴え,CTで腹腔内遊離ガスと腹水出現あり,消化管穿孔の可能性が否定できず手術を行った.入念な精査をしたが消化管穿孔は認めず,洗浄とドレナージを行い手術を終了した.症状改善傾向であったが,術後19日目に症状の再燃をきたした.抗生剤加療で軽快.術後49日目でようやく気腹の消失を認めた.本症例では手術時,再燃時の腹水培養が陽性であったため,続発症として細菌性腹膜炎を起こす可能性も考えられた.特発性気腹症の治療には,手術でも保存的加療でも抗生剤加療を併用するのが望ましいと考えられた.