北関東医学
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ラットの “におい” 条件反応による嗅覚の研究
その1 “におい” 識別の学習と嗅神経の経路傷害の影響
牧野 総太郎
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1971 年 21 巻 2 号 p. 104-113

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抄録

Naramycinを無条件刺激, 0.0001% Anise Oil, 0.0001%Clove Oilを条件刺激として摂水行動により'におい'の識別能力を調べた.そして前交連前枝や外嗅索を切断し, また嗅球を除去してそれが喫におい'識別能力におよぼす影響をしらべ, これらの神経系が'におい'の識別において果たす役割とその大きさを研究した.
1 無処置正常ラットは約6日間の識別学習によって完全に'におい'の識別が可能となった.'におい'の組合せを変えて学習を反復すると識別条件反応の成立は次第に早くなった.
2 'におい'の識別学習を終えたラットの片側の嗅球を除去すると識別能力は低下するが, 日と共に徐々に回復して22ないし25日後にほぼ完全に回復することが明らかにされた.しかし両側嗅神経系による識別能力を片側だけで完全に代償できないことも分った.また, 嗅球のレベルにおいては'におい'識別に関して左右の優位性はなかった.
3 前交連前枝切断と外嗅索切断は共に'におい'の識別学習の効果を低下させたが, 後者の方が影響が大であった.また切断後の識別能力においても後者の方がより大きい影響を与えた.その点でA.C.Allisonの言うように外嗅索が'におい'のより精密な識別の役割をはたしていると思われる.
4 両側の前交連前枝と外嗅索を全部切断したラット群は, 両側の嗅球を除去した群にくらべ識別学習においても, 切断手術後の識別能力の回復においても, はるかにすぐれていた. これは第3の嗅覚経路の存在を示唆するものである.
5 三叉神経は'におい'の識別に関与するが'におい'識別力全体からみればその役割は小さいと考えられる.

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