北関東医学
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循環器疾患を中心とする有病状況の地域差の検討
群馬県国保統計 (昭和49年5月診療分) からの観察
辻 達彦土田 英一
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1977 年 27 巻 2 号 p. 123-130

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抄録

地域医療の前提条件としては各地域の罹病統計の整備があげられる.この見地にたち, 国保診療統計を資料として保険者別の有病状況を把握し, 病因論と医療のあり方に示唆を得ようと試みた.現在の県下国保被保険者数は806,873で全県人口の約1/2を占めるのみで, 得られた所見から直ちに全般を推定することは容易ではない.しかし, 大部分の農村地域住民を包含しているので農村医学的地域医療の立場から有力な情報が得られることが期待されよう.
本県の循環器疾患の動向をさぐる目的で昭和49年度群馬県国保診療統計 (5月分) を資料として, 地域別の受診率 (被保険者1,000人あたりの件数) を計算し, 地域差の解明の一助とした.取上げた病類別疾患は高血圧疾患, 虚血性心疾患, 脳血管疾患が主体であり, 参考として, 消化性潰瘍及びその他の胃及び十二指腸疾患をとった.
その主な所見は次の通りである.
1) 被保険者1,000人あたりの件数即ち受診率を県平均でみると, 高血圧疾患48.29, 虚血性心疾患4.66, 脳血管疾患17.72であった.
2) 県平均より統計学的に有意に高いと判定されるところは※で示したが, これを病類別にみると, 高血圧疾患は県北及び西毛地方に集まり, 虚血性心疾患は前橋, 高崎を中心とする地域と沼田一円に集中がみられる。一方, 脳血管疾患は赤城山及び榛名山を囲む地域に目立ち, また伊勢崎方面に集まっている.
3) 地域分布を順位相関係数からみると, 高血圧疾患と脳血管疾患は有意の負の相関を示し, 虚血性心疾患と脳血管疾患は有意の正の相関を示す.参考として調べた消化性潰瘍と虚血性心疾患とは有意の正の相関を示したことは興味が深い.
4) 以上の所見は国保診療統計によって判断したものであるが, 県全般を推定する資料として地域医療という角度で活用の余地が少くないと考える.

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