北関東医学
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実験的糖尿病ラットの新生仔心肥大の成因に関する研究
電顕および内分泌学的検討
太田 直樹
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1994 年 44 巻 3 号 p. 203-217

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抄録

糖尿病妊婦の新生児にみられる合併症として一過性の心筋障害の発生が知られている.このような心病変の成因を明らかにするため, 著者はストレプトゾトシンにより作製した糖尿病ラットを妊娠させ, その仔ラットの心形態変化を胎令15日より生後2日まで光顕および電顕を用いて観察した.また, 成長因子であるIGF-I, インスリンを測定し, 胎仔の発育および心肥大との関連について内分泌学的に検討した.DM群 (糖尿病ラットの仔), 対照群 (非糖尿病ラットの仔) とも胎生15日から18日まで非対称性心室中隔肥厚 (DVST) を呈した.対照群では胎生21日よりDVSTが消退したが, DM群では胎生21日で76%, 生後2日で60%にDVSTが残存した.電顕による観察で胎仔心の心筋細胞間結合は未熟な形態である側側結合や端側結合が多く, その頻度は胎齢にしたがって減少したが, DM群では胎生21日, 生後2日で対照群に比し未熟な心筋細胞間結合が有意に多く残存していた.DM群の胎仔および新生仔では血清IGF-I, 血清インスリン, 膵インスリン含量の低下を認め, また, 血清IGF-Iと血清インスリンは心/体重比および心室中隔壁厚/左室自由壁厚比と負の相関を示した.以上のように, 糖尿病母体新生仔ラットでは胎児期の未熟な心形態が新生仔期まで残存して新生仔ラットの心にDVSTを呈するが, その要因のひとつとして胎生発育期における血清IGF-Iと血清インスリンの欠乏との関与が考えられる.

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