北関東医学
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股関節人工骨頭置換術後の大腿骨骨髄腔の血行に関する実験的研究
慕 鷹
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1994 年 44 巻 6 号 p. 645-652

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抄録

股関節に対する人工骨頭置換術後, 人工骨頭と大腿骨との固着に骨セメントを使用する場合 (以下セメント群, n=15) と, 使用しない場合 (以下セメントレス群, n=15) について, 両群の大腿骨骨髄腔の血行状態を比較調査した. 雑種成犬に対し, ステンレススチール製犬用人工骨頭を用いて, 左股関節人工骨頭置換術を施行し, セメント, セメントレス両群について, それぞれ術直後, 1, 3, 6, 12 週において, 人工骨頭ステム先端より 1cm 遠位において大腿骨を切断し, 近位及び遠位骨髄腔断面よりの出血量を計測し, 引き続き微小血管造影と軟 X 線撮影を全例に行った. なお, 全例右大腿骨の相当する部位を対照群 (以下コントロール群, n=30) とした. 三群共近位, 遠位の各週の問における出血量には有意差はなかったものの, 術後の平均値より, 近位骨髄腔断面出血量は, コントロール群で は2.26±0.31g/min/100g (Mean±SE), セメントレス群では 0.76±0.26g/min/100g (p<0.0002) に対し, セメント群では 0.02±0.01g/min/100g (p<0.0001) に減少した. 遠位骨髄腔断面出血量は, コントロール群では 1.40±0.18g/min/ 100g, セメントレス群では 0.83±0.20g/min/100g, セメント群では 0.92±0.30g/min/100g であった. コントロール群において検査部位の大腿骨骨髄腔血流の約2/3は近位より供給され, 約 1/3 (p< 0.02) は遠位より供給されるものであることを確認した. 又, セメントレス群の大腿骨骨髄腔近位血流量はコントロール群に比べ 1/3 に減少しているものの, 血行は保たれていることが確認され, 血行の面から考えると, 人工骨頭置換術における骨との固着方法はセメントレス法が望ましいと示唆された.

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