抄録
群馬県地方における蟯虫の浸淫につき, これを年今階層別, 性別に観察し, その浸淫状況を明かにするとともに, それの感染源として小児手指, 学校塵埃, 家庭塵埃および便所扉のツマミ等を重視し, これら物件からの蟯虫卵検出を試み以下の結論をえた.
1) 年令階層別に蟯虫寄生率をみると, 乳児期には極めて低く (2.6%), 1~3才の幼児期になるとやや急増する (212%) が, これは学令前期 (4~6才幼稚園児) に至り51.4%とさらに増大し, 学令期 (小学校1年児) において最大 (57.0%) に達するが, 成人期に移行するにつれて急激にその寄生率が減少する.
2) 性別寄生率は, 各年令階層とも (但し成人層については触れない) 女子は男子よりも高率がしめされた.
3) 手指からの蟯虫卵検出率は, 被検児童 (幼稚園児) 計64名中虫卵陽性者, 3名 (男子33名中1名, 女子31名中2名) 4.7%であつた.
4) 小学校塵埃および蟯虫卵保有児家庭塵埃中の蟯虫卵検出を試み, 10件検査中7件 (70%) に陽性を見, 検査塵埃量49中の最大発見卵数14コ (うち約70%は仔虫包蔵卵), 平均塵埃量1.4g中蟯虫卵1コの成績をえた.
5) 幼稚園および小学校の便所扉のツマミ19件についての検査で, その5件 (計8コ) に蟯虫卵が検出された.