Journal of UOEH
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日本語版Profile of Mood States(POMS, 感情プロフィール検査)の各質問が表す気分の解釈に関する検討と有機溶媒曝露者への応用
大西 晃生森 晃爾郡山 一明宮田 正和村井 由之池田 正人
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1993 年 15 巻 2 号 p. 147-154

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抄録

POMSは産業医学の領域において, 欧米では広く用いられ, 日本でも用いられつつあるが, その日本語訳は確立されていない. 本報告では, POMSの日本語訳を作成し, 日本語訳された56項目の質問内容が, 3学年261名の医学生によってどのような気分を表すと判断されたかを検討した. 原版でその質問項目が表す気分尺度とは別の気分尺度を表すと判断された頻度が20%以上の項目数は3学年平均約20項目で, その多くは「抑うつ-落ち込み」および「緊張-不安」に属する項目であった. 同様に異なって判断された頻度が5%以下の項目は約15項目で, その多くは「活気」に属する項目であった. 日本語訳されたPOMS検査を自動車部品製造工場の106名の従業員に行い, 有機溶媒曝露男女59名において, 尿中馬尿酸値(クレアチニン補正値)と「怒り-敵意」の得点の間に正の相関(P<0.05)を認め, さらに年齢と「緊張-不安」, 「抑うつ-落ち込み」, 「怒り-敵意」, 「疲労」および「混乱」の各々の得点との間に有意な逆相関(P<0.05-0.001)を認めた. しかし有機溶媒曝露者61名と非曝露者45名の間においてすべでの項目の得点に明らかな差を認めなかった. POMS検査は, 有機溶媒曝露者の神経行動学的検査バッテリーの項目の一つとして, 自覚的な心理学的側面を検査する目的で重要と判断される.

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© 1993 産業医科大学
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