北関東医学
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胸腺全摘, 左肺上葉および大動脈弓部部分切除術後の遠位弓部仮性大動脈瘤に対する胸骨正中切開によるステントグラフト挿入術
大林 民幸小谷野 哲也安原 清光大木 聡
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2003 年 53 巻 4 号 p. 397-401

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抄録
本例は61歳の男性で, 56歳時に胸腺癌のため胸骨正中切開, 左前側方開胸下に胸腺全摘出, 左肺上葉および弓部大動脈部分切除を他科で実施された.術後のCTで大動脈解離を発症していた.背部圧迫感を主訴とする遠位弓部仮性大動脈瘤の増大のために紹介された.慢性大動脈解離で真腔が狭小化しカテーテル治療は危険であった.左胸腔頂に仮性動脈瘤を形成し肺切除も受けていたため左開胸によるアプローチも困難であった.大動脈の僅かな剥離と横切開のみで行える胸骨正中切開からのステントグラフト挿入術を選択した.ステントグラフトは壁薄ダクロン人工血管にZ一ステントを縫着した後, 特注の弱湾22Frシースに充填し, 脳分離体外循環下に下行大動脈内まで安全に挿入し放出した.人工血管中枢側は大動脈内腔に縫合した.本例は従来型の手術では不可能な症例で, 胸骨正中切開からのステントグラフト挿入術のよい適応であった.術後2年8ヶ月の現在, 再発なく元気に社会復帰している.
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