溶液からの応力結晶化による高分子の分別

抄録

ずり応力による高分子の結晶化は,繊維およびフィルムの延伸による分子配向下での結晶化と異なり,溶液への応力付加による特異な分子配向下での結晶化として最近注目されだした。ずり応力による高分子の結晶化機構を結晶化物の形態学的研究から多くの検討がなされ,詳細な論文,総説などがあるので,それについてはここではふれず,ずり応力によるポリマーの分別および分離の観点から,種々の合成高分子についてなされた研究を紹介する。ここでは,立体規則性と関係する側鎖をもたない線状ポリエチレン,ポリオキシメチレン,立体規則性と関係せるポリプロピレン,ポリスチレン,ポリビニルアルコールおよび共重合物の分別性,さらに結晶化速度の明らかな差によるポリマーの分離性について述べたい。溶液からの応力結晶化によるポリマーの分別および分離の研究は,まだ緒についたところで,種々不明な点が多い。そこで,今後の研究の発展に読者の参考になればと考え,ここに今まで発表されている研究結果を著者の知り得る範囲で記した。