1973 年 22 巻 3 号 p. 131-138
触媒作用のある金属錯体を合成高分子に導入して触媒活性高分子を得ることは,いわば高分子の修飾を受けた触媒挙動を示すことになるため,たとえば金属酵素モデルへのアプローチという動機から大方の研究者の関心を集めてか,数多くの報告がある。しかし一般に扱われている錯体構造は必ずしも明確ではなく,これが錯体の反応性や触媒活性に関する取扱いを困難なものにしている。このような見地からまず構造明確な高分子金属錯体の合成を試み,高分子について錯体化学の諸問題を掘り下げて検討することは重要である。とくに高分子効果を単離して単純な合成高分子上に一つずつ具現化し,機能性の定量的追求を可能にすることが急務と思われる。ここでは主に酸化触媒作用を取り上げ,その素反応である電子移動反応から高分子金属錯体の特徴を考えるとともに,PPO樹脂を生成する酸化重合反応の触媒能を検定し,実用性をもった高分子錯体触媒としての展開を紹介する。