抄録
ローマクラブの“成長の限界”という報告は,人類が20世紀中に多くの課題を消化できなければ21世紀中には,滅亡の危機をむかえると警告している.石油資源の残存量があと30年といわれている現在,われわれは,エネルギー革命を遂行して,エネルギー源としての炭素資源の利用を早期に止めると同時に,この重要な天然資源の節約の意味で,炭素系高分子原料の代替物を開拓していく必要がある.その候補にあげられるのは,有機ケイ素ポリマーを代表例とする無機質高分子であろう.われわれのまわりに広く分布しており,地球の骨格の大半を構成しているケイ酸塩を,現代の錬金術である化学技術を駆使して人類に役立つ形にし,“砂の文明”を築き上げることが化学者のひとつの大きな課題ではないだろうか.