日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2003年度年会
セッションID: K8-14
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豊羽鉱山産樹枝状閃亜鉛鉱の微細構造について
*長瀬 敏郎
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抄録
【はじめに】
 北海道豊羽鉱山からは光学的異方性を示す“閃亜鉛鉱”が多く産出する。このような光学的異方性をもつ閃亜鉛鉱は著しい積層不整を有する構造をもつ。今回,光学顕微鏡下で樹枝状の形態を持つ閃亜鉛鉱を見いだし,透過型電子顕微鏡による微細組織の観察ならびに化学組成分析を行ったので報告する。
【試料並びに観察方法】
 観察試料は北海道豊羽鉱山出雲本ヒより採集した。この閃亜鉛鉱は偏光顕微鏡下では赤褐色から白色を呈する。クロスニコル下では強い異方性が認められ,複雑な繊維状から樹枝状の組織を示し,length-slowの光学的性質を示す。共生鉱物としては方鉛鉱,磁硫鉄鉱,黄鉄鉱,重晶石ならびに石英である。
 微細組織の観察には日本電子社製JEM-2010型透過型電子顕微鏡を用い,電子顕微鏡試料の作成にはイオンビーム法を用いた。また,化学組成の分析は日本電子社製エネルギー分散型電子線マイクロプローブアナライザーを用いた。
【観察結果ならびに考察】
 透過型電子顕微鏡下においてこの閃亜鉛鉱結晶は,(111)方向に伸長した強い形態的異方性をもつ樹枝状晶の形態を示す。結晶の大きさは幅1-2μm,長さは数10-数100μmである。この樹枝状結晶の“幹”の部分は数(111)レイヤー毎に積層欠陥をもつ著しい不規則型の構造を示し,その制限視野回折像は<111>*方向に強いストリークが認められる。
 “枝”部分に於いても同様の積層欠陥が認められるが,幹部分とは異なる{111}方向に平行に発達する。幹部から枝部への漸移する部分では,積層欠陥の減少が認められ,積層欠陥の少ない閃亜鉛鉱の構造をもつ。
 以上の観察結果からこの樹枝状晶は不規則型積層構造をもつ幹部分が(111)面に平行に成長した後に,(111)面での層成長により欠陥の少ない構造が形成され,構造中に新たな欠陥が生み出されることにより側方向へと枝状に伸びたと考察される。
 樹枝状晶は,一般に高い過飽和条件での成長で形成される。閃亜鉛鉱など積層欠陥の形成エネルギーが比較的小さな場合には,過飽和度が高い非平衡状態下では積層欠陥は容易に形成されると考えられる。樹枝状晶を形成する二次元核による成長では,結晶内部には多くの積層欠陥が導入されると考えられ,異方的な形態の変化と欠陥導入とが同時に起こる可能性がある。このような組織は双晶形成のエネルギーが小さな鉱物相の樹枝状晶には普遍的に見いだされる特徴と考えられる。
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© 2003 日本鉱物科学会
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