日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2003年度年会
セッションID: K3-24
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Wollastonite2Mの結晶構造に及ぼす圧力の影響について
*笛吹 孝宏栗林 貴弘工藤 康弘
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抄録

Wollastonite,CaSiO3には(100)での積層がb軸方向に1/2だけずれることにより積層周期が変化することで、さまざまなポリタイプが存在する。主にwollastonite1Tとwollastonite2Mが知られており、ほかにも3T,4T,4M,5T,7Tの存在が報告されている(Wenk 1969; Henmi et al.,1978; Henmi et al., 1983他)。このようなwollastoniteのポリタイプのX線回折パターンではk=2n反射は共通で、k=2n+1反射の周期が異なる。また積層周期が乱れるとk=2n+1反射の回折点はdiffuseする。温度、圧力を変えることでwollastoniteの積層周期が変化するかどうか非常に興味ある問題である。またwollastonite構造の原子配置にはpseudo-mirrorが存在することが知られており、そのような擬対称が温度や圧力でどのように変化するかは興味ある問題である。
 そこで今回はwollastoniteの結晶構造に及ぼす圧力の影響について単結晶X線回折法により調べた。解析に使用した試料は広島県東城町久代産のwollastonite2Mである。高圧下におけるX線回折実験は、四軸自動回折計(Rigaku, AFC-7S, MoKα,Λ=0.71073Å, 50kV, 30mA)に改良型ダイアモンドアンビルセル (Kudoh and Takeda, 1986)を装着して行った。ガスケットにはSUS301を使用し、圧力媒体にはメタノール:エタノール4:1の混合液を用いた。圧力はRuby蛍光法(Piermarini et al., 1975)により決定した。試料サイズは60×60×40μm3である。2.7,4.8,7.0GPaでそれぞれ回折強度を測定した。結晶構造解析にはRfine90(Finger and Prince,1975)を使用し反射の重みにはrobust-resistant法を適用した。尺度因子により比較したFoとFcではk=2n反射の一致具合に比べk=2n+1反射の一致が悪い。2.7GPaでの回折強度データからk=2n反射のみを用いて平均構造を解析するとモデルの一致度を示すRは9.0%, Rwは2.4%に収束する。k=2n+1反射の一致が悪い原因として,積層周期の乱れることで回折ピークがdiffuseし強度を弱く見積もっている可能性が考えられるが,2.7GPaにおけるwollastonite2Mのk=2n+1反射のFoは全体的にFcに比べて系統的に小さい値を示しているわけではない。4.8,7.0GPaでの結晶構造については現在解析中である。

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© 2003 日本鉱物科学会
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