日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2003年度年会
セッションID: K3-25
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ランガサイト圧電単結晶の高圧下での結晶構造
大里 齊柿本 健一岩瀧 剛司*荒木 伸和栗林 貴弘工藤 康弘守越 広樹
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抄録

次世代移動体通信用デバイスとして、高周波かつ広帯域に対応した高性能表面弾性波フィルター(SAW)が求められており、圧電特性に優れたLa3Ga5SiO14 (ランガサイト)系材料がSAWフィルター基板材料の候補の一つとして注目されている。
 ランガサイトは三方晶系(結晶学データ:空間群P321, 格子定数a=8.1674 c=5.0964(Å), Z=1, Dx=5.7384(g/cm3))であり、Laを含むAサイトは8配位十面体、Gaを含むBおよびCサイトはそれぞれ、6配位八面体および4配位四面体、そしてGaとSiが約1/2ずつ占有するDサイトは4配位四面体からなる。様々な陽イオンで一部置換したランガサイトは異なる圧電特性を示すことが知られており、常圧下におけるX線結晶構造解析結果から、その結晶構造中の各サイト変形能と強い相関があることを論じてきた。
 本研究では、高圧下においてランガサイト単結晶の結晶構造解析を行い、圧電特性発現機構の詳細を調べた。
 Czochralski法により育成したランガサイト単結晶を球形に成形した。四軸型単結晶X線回折装置Rigaku AFCにて回折強度測定を行った。高圧下での測定(3.3, 4.8, 6.1GPa)ではダイヤモンドアンビル高圧発生装置(DAC)を用いた。得られた回折データを、フルマトリックス最小二乗法プログラムRADY(S.Sasaki, 1982)に供して結晶構造を精密化した。
 圧力を印加することで格子定数はa, c共に直線的に減少した。しかし、c軸方向に対してa軸方向の収縮率が約1.5倍と高いことから、a軸方向がc軸方向よりも優先的に収縮するものと考えられる。これは、Aサイト及びBサイトが並ぶ層の上下に二つのCサイトを介した空隙部分が存在することが原因であり、圧力印加により、この空隙部分が大きく収縮したことがa軸方向の収縮の主な要因である。そしてこの収縮によって、Aサイト内で電荷のバランスが崩れ、分極が起こり、圧電性が発現するものと考えられる。

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© 2003 日本鉱物科学会
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