日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2003年度年会
セッションID: K4-04
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鉱物界で見いだされたトポロジカルなひげ結晶2種と石英の霜柱
*砂川 一郎高橋 泰今井 裕之山田 滋夫Jobbins E. AlanTinnyunt Emma
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抄録

最近、CVD法で育成した金属、硫化物、セレン化物、窒化物などでヘリカル、コイルなどのトポロジカルな形をもつひげ結晶が見いだされ、1次元導体など利用面も含めて、ひげ結晶についての新しい関心を呼んでいる。鉱物の世界ではこの種のひげ結晶の報告はない。ここで報告するのは、1)透明水晶中に観察されたコイル状のルチルのひげ結晶、2)スカルン晶洞中のヘデンベルグ輝石単結晶上にできたコイル、ヘリカル、カール、リボン、縄状などの角閃石ひげ結晶、および3)2)と同時に形成された霜柱状の石英についてで、いずれも鉱物界でははじめての観察である。
  ルチル入り水晶はジュエリーで広く使われる試料で、インクリュージョンとして含まれるルチルは普通針状を示すが従来ひげ結晶としては認識されていなかった。ミャンマー産透明研磨石中にコイル状を示すルチルひげ結晶が、直線状、わずかに捻れたひげ結晶とともに見いだされた。ルチルひげ結晶はVLS機構を示唆する球状物体を伴わないことから単純なVLS機構によるものではなく、3価の不純物吸着による脱酸素過程が起こり先端面のみがラフニング転移し成長をリードするためひげ結晶が出来たのであろうと考えられる。
  一方、スカルン晶洞中のヘデンベルグ輝石短柱状単結晶の褐色部から選択的に成長しているアスペクト比1000以上に達するコイル、ヘリカル、カール、リボン、縄状のひげ結晶は微小部XRF分析、微小部XRD解析の結果から角閃石族の結晶と同定され、また同時に形成されている霜柱は石英と同定された。トポロジカルな形をしていても、いずれも非晶質ではなく結晶質である。レーザー顕微鏡で角閃石ひげ結晶の頂点には常に組成の異なる球状ないしフイルム状物質が存在することがわかり、これらがVLS機構により成長したと結論できる。リボン、カール状ひげ結晶はフイルムから成長し、その先端でコイル、ヘリカル、縄状の形を取る。これらはすべて太さ0.7μm以下の単位のひげ結晶多数の束で出来ている。単位のひげ結晶1本1本の先端には球状粒子が存在する。トポロジカルな形はこの種の集合成長の結果として現れたもので、また単位のひげ結晶はEshelby twistを示す。同一ヘデンベルグ輝石中に観察される石英の霜柱はその組織、産状、生成機構の全ての面で氷の霜柱と全く等しい。角閃石ひげ結晶、石英霜柱ともにヘデンベルグ輝石成長後に供給された水と硫黄をふくむ気相とヘデンベルグ輝石の反応によって形成され、その後成長した方解石結晶中にインクリュージョンとして取り込まれたものである。

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© 2003 日本鉱物科学会
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