日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2003年度年会
セッションID: K4-08
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3次元フェイズ・フィールド・モデルを使ったコンドリュール固化過程のシミュレーション
*横山 悦郎入澤 寿美
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抄録

隕石中に多数含まれるバードオリビン・コンドリュールの組織は、外周のリム部とバー状の内部組織に分けられる。これまで多数のバー状組織再現の実験があるが、リムを含む二重組織の再現は最近の浮遊実験[1]で初めて可能になった。このリムの形成は非常に限定された環境でのみ可能と考え、過冷却融液からなる液滴の内部固化過程を3次元1成分系のフェイズ・フィールド・モデル[2,3]を使ったリム形成シミュレーションを行った。数値実験で作られた結晶は,直径1ミリ程度の融けた珪酸塩の液滴が10秒程度で急冷されてできた内部固化パターンを示す。我々のモデルは、ハイパー・クーリングとよばれる超高過冷却条件で、更に液滴サイズが大きい場合リム組織が形成されることを示す。
 フェイズ・フィールド・モデルとは、固相ではphi=0、液相ではphi=1となる変数phiを導入し、固体・液体界面で0から1まで連続的に変化する厚みのある界面を導入するモデルである。場所と時間の関数である変数phiに関する場のダイナミックスは,局所的なエントロピー生成から導かれる時間発展方程式で記述される。局所的なエネルギー保存則と局所的なエントロピー生成則の時間発展連立方程式を数値的に解くことによって温度場Tと変数phiの場が得られる。通常、界面はphiの位置にあるとする。モデルでは核形成の過程は考慮されていないので、初期条件として液滴表面に一カ所適当なサイズの種結晶を置く。
 数値実験によって得られた固化パターンは、パラメータS及び無次元化された液滴の初期温度で整理される。パラメータSは、融点とコンドリュール外部の温度の差を潜熱と比熱の比で割ったもので与えられ、過冷却度の大きさを表す。
 数値実験の結果、以下のことが分かった:
1)液滴の初期温度が融点以上でなければリム構造が形成される可能性は低い。
2)薄く同じ厚みのリム構造が形成されるには、大きなS即ち、高い液滴初期温度と小さい潜熱が必要である。これは、ハイパー・クーリングとよんでいる条件に対応する。
3)高い液滴初期温度と小さい潜熱という条件下でも、初期結晶のサイズが小さいとリム構造が形成されない。即ち、リム形成の臨界サイズ(下限)が存在する。従って結晶サイズもコンドリュールの内部構造に大きな影響を与えている。

[1] K. Tsukamoto {\it et al.} in preparation.
[2] S.-L. Wang and R. F. Sekerka, J. Computation Physics 127, 110-117(1996).
[3] R. F. Sekerka, in {\it Advances in Crystal Growth Research}, Eds. K. Saito, Y. Furukawa and N. Nakajima, Elsevier, Amsterdam(2001).

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© 2003 日本鉱物科学会
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