宇宙や微小重力空間での結晶化の大きな特徴に、無容器による結晶化があげられる。重力空間でメルトを保持するには容器が必要であるため、通常の核形成は容器壁などからの不均質核形成が避けられない。そのため、メルトに過冷却をつけると容易に核形成が生じる。それに対して、微小重力や超音波浮遊などの方法でメルト球を空間に浮遊させると核形成は大幅に遅れることが知られており、冷却中のメルトでは数100K~1000K程度の驚異的な高過冷却状態が容易に得られる。これらの浮遊法を珪酸塩メルトからの結晶化に応用すると、宇宙空間でのコンドリュールなどの結晶化を模擬することが可能である。
今回は主に超音波浮遊法によるバードオリビンコンドリュールの再現を行った。直径2mm程度の様々なオリビン組成のガラス・結晶球を浮遊させた後、Arガスレーザーで加熱融解する。その後、放射冷却しながら結晶化過程を高速度カメラでその場観察する。冷却中のメルト温度は2波長パイロメーターでスポット測定する。
結晶化には300K~1000Kの超過冷却状態が必要である。結晶化は0.1~3秒で完了する。この急速な結晶化に伴い潜熱の放出が確認でき、過冷却メルトは融点温度まで容易に復熱する。この一連の結晶化実験の結果、バードオリビンコンドリュール組織ができる過冷却度は300K~400K程度と結論できる。重要なのは、この浮遊法により外周にリム部、内部にバー状組織をもつ天然組織が初めて再現できたことである。
これらの結果より、放射冷却速度と結晶成長速度の競合による2重構造をもつコンドリュール形成モデルが提唱できる。