抄録
ストロンチオ斜方ジョアキン石(”奴奈川石”)は、茅原ら(1974)によって新潟県青海町金山谷のアルビタイト中から青海石などの含Sr鉱物とともに発見された鉱物である。組成はNa2+xBa4Fe1.5(Sr,Ba,REE,Nb)4-xTi4(O,OH)4(Si4O12)4・2H2Oで、多形関係にある鉱物としてストロンチオジョアキン石がある。茅原ら(1974)はX線単結晶法により斜方晶系として決定した。今回新潟大学所蔵の標本より金山谷産のアルビタイト中の、黄色で本鉱物とされている4試料を用いて透過型電子顕微鏡で検討した。 透過型電子顕微鏡観察用には、試料は、微少量の粉末をつくり、JEM 2010高分解能透過型電子顕微鏡で観察した。組成は、付属のEDS(Noran Inst. Voyager IV)で検討した。 電子線回折および高分解能観察により検討した結果、すべての試料に(001)面での積層不整が観察され、一部の試料ではそれが著しい。さらに、ある程度の大きさをもつ単斜晶系部分と斜方晶系部分とが平行連晶している部分も比較的頻繁に観察された。つまり、独立の相としての単斜相が存在しているとみることができ、高分解能電子顕微鏡像では単斜相と(001)面で頻繁な積層不整がみられた。 Dowty(1975)はジョアキン石族鉱物の結晶構造解析を行ったが、これ以前に Cannillo et al.,(1972)は 単斜晶系ジョアキン石構造が(001)面のpseudo mirror をもち、このことは頻繁な双晶構造が起りうることを指摘している。トポロジー的にはこの双晶構造は、積層不整ととらえることができる。つまり、単斜構造のスラブの積層が c* 方向 に3/8 a のdisplacementで続くと単斜晶構造であり、これが - 3/8 a のdisplacementで起きると斜方晶構造となる(但し、双晶構造は厳密に mirror operation であり、translation とは異なるので構造上の微修正を含む)。 今回観察された、青海産試料の結晶構造の乱れは結晶の個体差が大きく、ほとんど斜方晶系のものから半分以上が単斜晶系のものまでさまざまであるが、ほとんど斜方晶系のものでもわずかな不整は必ず含んでいることがわかった。 また結晶個体間の色の違いも見られるが、組成・産状と単斜晶と斜方晶の頻度、また積層不整密度等との関係は現在検討中である。