日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2004年度年会
選択された号の論文の151件中1~50を表示しています
  • 鈴木 功, 井上 靖, 小田 仁, 森岡 正名
    セッションID: k01-01
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    透輝石(diopside,CaMgSi2O6)はその重要性にもかかわらず,その弾性率データの報告は希であった。単斜晶系においては13個の弾性率を測定する必要があるためである。近年,ブリュアン散乱法 (Collins and Brown, 1998 ) に引き続いて共振法による弾性率測定結果が報告され始めた(Isaak and Ohno,2003;大野,2003;鈴木ほか,2003)。今回,我々は透輝石単斜晶試料に球共振法の適用を試み,共振スペクトルに適合する弾性率を得た。
  • 間山 憲仁, 鈴木 功
    セッションID: k01-02
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    透輝石(diopside,CaMgSi2O6)は上部マントルを構成する主要鉱物の一つである。透輝石の弾性率とその温度・圧力変化は上部マントルの鉱物構成を議論する上で重要な意味を持つ。しかしながら,透輝石は単斜晶系に属するのでゼロでない独立な弾性率の数は13個であり,測定データは少ない。近年,共振法により透輝石の弾性率測定が開始された(Isaak and Ohno,2003;大野,2003;鈴木ほか,2003;鈴木ほか,2004)。今回我々は常温から500Kまで透輝石合成単結晶試料についてその共振周波数を測定し,弾性率の温度変化を得た。
  • 松井 正典
    セッションID: k01-03
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    1.はじめに高温高圧実験においては、広範な温度圧力領域にわたる高精度な圧力スケールの使用が不可欠である。室温での圧力スケールについては、密度と体積弾性率の同時測定に基づく圧力の絶対測定により、従来のルビー蛍光法(Mao et al., 1986)による測定が極めて高精度で実際の圧力値を与えることが確認されている(Zha et al., 2000)。しかしながら、高温における圧力スケールについては、用いる圧力標準物質の種類により、また、圧力を評価する際の手法の違いにより、かなり異なったT-P-V状態方程式が提案されており、残念ながらいまだ最終的に確立された圧力スケールが得られていない。例えば、近年高温における圧力スケールとして良く用いられている金スケールについては、温度1500_から_2000K、圧力20_から_30GPaの範囲で、Jamieson et al.(1982), Anderson et al.(1989), Shim et al.(2002)によるスケール間で、最大3GPaもの誤差が存在する。我々は今回、高温における圧力スケールとして用いるために、MD法を用いた計算機シミュレーションにより、NaCl及びMg2SiO4リングウッダイトについて、常温常圧から高温高圧に至る高信頼度なT-P-V状態方程式を求めたので、その結果を報告する。2. MDシミュレーション結晶のポテンシャルエネルギーを、クーロン項、ファンデァワールス引力項、反発項から成る二体間相互作用の和で表した。加えて、酸素イオンについては、結晶内における多体相互作用を取り扱うためにbreathing shell model(Matsui, 1998; Matsui et al., 2000)を適用した。構造、物性への量子補正はMatsui(1989)により行なった。Mg2SiO4リングウッダイトについてのエネルギーパラメータは、Matsui(1999)を用いた。NaClについてのエネルギーパラメータは、NaClについての室温から融点付近(1073K)に至る熱膨張データ(Enck and Dommel, 1965)、圧力0_から_3.2 GPa, 温度298_から_773Kの範囲のピストンシリンダー装置による静水圧縮データ(Boehler and Kennedy, 1980)、及び、室温から800Kまでの弾性定数データ(Spetzler, 1972; Yamamoto et al., 1987)の全てを精度良く再現するとの条件を用いて経験的に求めた。3.結果と考察Mg2SiO4リングウッダイトについては、Katsura et al.(2004)による、高温におけるMgO とMg2SiO4リングウッダイトの温度_-_圧力_-_体積同時測定データに基づいて、今回求められたMg2SiO4リングウッダイト圧力スケールとMatsui et al.(2000)によるMgO圧力スケールを詳細に比較した。その結果、両スケールが与える圧力値が、温度1500_から_2000K,圧力18_から_23GPaの範囲に渡って、非常に良く一致する(平均の誤差0.1_から_0.2GPa)ことを見出した。MD計算が高温のシミュレーションに特に適した方法であること、及びMgO スケールとMg2SiO4リングウッダイトスケールが全く独立に求められたことを考慮すれば、今回の結果は高温における、MgO スケールとMg2SiO4リングウッダイトスケールの両者にかなりの高信頼性を保証するものであろう。続いて、NaClについても、今回MDを用いて求められた圧力スケールを、従来報告されているNaCl圧力スケール(Decker, 1971; Birch, 1986; Brown, 1999)による結果と詳細に比較した。
  • 米田 明, 久保 敦
    セッションID: k01-04
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    金など立方晶の圧力マーカーにおいて、111と200回折線におけるストレス効果は選択配向の影響を受けない。この性質を利用して、ダイヤモンドアンビル装置における金圧力マーカーの平均圧力と偏差応力の同時決定をおこなった。
  • 有馬 寛, 大高 理, 久保 勝之, 内海 渉, 片山 芳則, 吉朝 朗
    セッションID: k01-05
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    シリケートメルトの構造について知ることは地球内部の進化やマントルダイナミクスを理解するにあたって重要である。本研究ではCaSiO3ぺロブスカイトのアナログ物質であるSrGeO3の高温高圧XAFS実験を行い、固相と液相のそれぞれにおける局所構造の圧力変化を観察した。高温高圧XAFS測定はSPring-8のビームラインBL14B1において、GeのK吸収端について行った。測定は室温および温度1300℃において10 GPaまで行った。室温での加圧実験では5 GPa 以上においてスペクトル形状の変化が見られた。5 GPa でSrGeO3 II相からペロブスカイト相への転移が起こっていると考えられる。高温での測定については動径構造関数から試料の融解を確認した。10 GPaまでの加圧において液相中ではGe_-_O原子間距離が連続的に増加した。これは加圧によって高配位のGeが増加することを示唆している。
  • 浦川 啓, 渡辺 直樹, 高橋 伸行, 安藤 良太, 坂巻 竜也, 鈴木 昭夫, 大谷 栄治, 片山 芳則
    セッションID: k01-06
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    地球深部における珪酸塩メルトの挙動を解明するためには,圧力下におけるその密度は極めて重要な物理量である。我々は任意の圧力温度条件で密度測定ができるX線吸収法を軽元素からなる珪酸塩マグマの密度測定に適用するためSPring-8において研究を進め,単結晶ダイヤモンドからなる試料カプセルを用いることにより珪酸塩メルトの密度測定に成功した。測定試料はNa2Si2O5 + FeO(1:1)のガラスで,BL22XUに設置されているキュービックプレスSMAP180を用い,約3.5GPa・1500Kまでの圧力・温度で実験を行った。25keVの単色X線を用いて入射強度(I0)と透過強度(I)をイオンチェンバーで測定し,試料の半径方向のX線吸収プロファイル得た。本研究では鉄を含んだNa珪酸塩ガラスの密度を5GPa・600Kまでの条件で,同メルトの密度を3.5GPa・1500Kまでの条件で測定した。
  • 小野 重明
    セッションID: k01-07
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    近年、CaIrO3型構造が、地球を構成する主要な酸化物の高圧相として出現することが注目されはじめた。高圧鉱物は常温常圧条件では準安定な状態なので、しばしば高温高圧状態を凍結して常温常圧条件で観察することができない。CaIrO3型構造を持つ高圧相もその例の一つである。したがって、本研究では、高温高圧条件でのその場観察の手法を用いることにより、CaIrO3型構造を持つ、高圧鉱物を観察することを試みた。高圧実験は、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を使用し、X線その場観察の手法を組み合わせた。X線実験はSPring-8のBL10XU [1]とPFのBL13A [2]の放射光を使用した。室温条件で圧力を上げていくだけで、高圧相へ相転移する物質も存在するが、多くの場合、相転移にともなうカイネティクスの影響により、圧力を上げるだけでは熱力学的に安定な高圧相へ相転移しないことがある。そこで本研究では、高圧条件でレーザーによる加熱を行い、相転移を促す方法を用いた。加熱レーザーはSPring-8ではYLF型レーザーを用いた。YLF型レーザーは優れた性能を示すことが知られているが、PFではこのタイプの高性能レーザーが使用できないため、旧タイプのYAG型レーザーを使用した。Fe2O3は常圧ではコランダム構造をとり、圧力の上昇にともなってペロフスカイト型あるいはRh2O3(II)型構造へ相転移することが報告されている。本研究では、アルゴンあるいはNaCl圧媒体に入れたFe2O3試料を、高圧条件で加熱をしたところ、約60GPaで新しい構造へ相転移することを観察した[3]。新しい高圧相はCaIrO3型構造を示していて、さらに試料圧力を上昇したが、約100 GPaまでの圧力条件では安定に存在できることが判明した。相転移境界を精密に決定することを試みたところ、相境界の傾きは2.2MPa/Kであった。次にMgSiO3を実験の出発物質として用いた。MgSiO3は約23GPaでイルメナイト型構造(コランダム構造)からペロフスカイト構造で相転移することが広く知られている。本研究ではアルゴン圧媒体に入れたMgSiO3試料を、高圧条件で加熱したところ、約130GPaで新しい構造へ相転移することが判明した[4]。この高圧相もCaIrO3型構造を示していて、約160GPaの圧力まで安定に存在することを確認した。最後にAl2O3を実験の出発物質として用いた。Al2O3は常圧ではコランダム構造をとり、圧力の上昇にともなって、約80GPaでRh2O3(II)型へ相転移することが報告されている。本研究では圧媒体を使用せずにAl2O3試料を高圧条件で加熱したところ、約200GPaで新しい構造へ相転移することが判明した。この高圧相もまたCaIrO3型構造を示していた。本研究によって確認された高圧鉱物を整理すると、低い圧力条件でコランダム構造を持つ鉱物は、ペロフスカイト型あるいはRh2O3(II)型へ相転移した後、最終的にはCaIrO3型構造へ相転移するということが導かれる。[引用文献][1] Ono et al., Phys. Chem. Mineral., 29, 527-531 (2002); [2] Ono et al., Phys. Earth Planet. Inter., 131, 311-318 (2002); [3] Ono et al., J. Phys. Chem. Solid., 65, 1527-1530 (2004); [4] Oganov & Ono, Nature, 430, 445-448 (2004)
  • 岡田 卓, 山中 高光, 峰 哲郎, 永井 隆哉, 鍵 裕之
    セッションID: k01-08
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    1. はじめに地球下部マントルにおいて、アルカリ元素(特にNa, K)はどのような形態で存在しているのだろうか。最近MORB組成において、NaやKに卓越した相(カルシウムフェライト構造相、CAS相、NAL相など)の存在が報告されている。一方で大量に存在するペロブスカイト中の微量成分として存在するとの提案もある。本研究では、下部マントルでより酸化的な条件におけるNaを含むペロブスカイト端成分の存在を期待して、エジリン(NaFe 3+ Si 2 O6)の高温高圧相関係を、DAC・レーザー加熱・放射光を組み合わせて調べた。2. 実験出発物質は、Na2CO3, FeO(OH), SiO2試薬をモル比で1:2:4に混合した試料を800℃で12時間焼成した後、粉砕し再度焼成という作業を数回繰り返して合成した。粉末X線回折及びEDS化学組成分析によりエジリンであることを確認した。この粉末試料をレバー式DACに封入した。ガスケットは肉厚250mmのRe箔を50mmまで予め仮押ししたものを用い、試料の上下には断熱材としてアルミナ粉末を置いた。この試料を目的の圧力(現在のところ31GPa及び52GPa)まで加圧し、KEK-PF BL13A設置のNd-YAGレーザーを用いて加熱し1300~1500Kにおいてアニーリングした。各圧力及び加熱前後に、室温において放射光X線回折測定を行った。発生圧力は室温においてルビー蛍光法により決定した。3. 結果と考察31GPa及び52GPaでは加熱アニーリング後、エジリンがスティショバイトとヘマタイトに分解していることが観測された。Naを含む結晶相は観測されなかった。未反応のエジリンは残っていた。本実験結果より、エジリン組成の単一相(例えばペロブスカイト相)としては少なくとも52GPaまで存在しないことが明らかになった。下部マントルにおけるNaは、大量に存在するペロブスカイト中の固溶成分としてではなく、卓越相として微量体積存在する可能性が高い。
  • 末田 有一郎, 入舩 徹男, 井上 徹, 肥後 祐司, 國本 健広, 名村 弘基, 舟越 賢一
    セッションID: k01-09
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに MgAl2O4スピネルは、低圧のカンラン岩質捕獲岩の一般的な組成であり、上部マントル浅部においてAlや他の3価の陽イオンにとって重要な寄宿先になっている。また、Alは下部マントルにおいて主にペロブスカイト相に含まれると考えられているが、MgAl2O4スピネルの高圧相もAlのホストとして、特に沈み込む玄武岩地殻において重要であり、その高圧相関係を明らかにすることはマントルの化学組成を明らかにする上で重要であるといえる。本研究では25_から_45GPa、2500 Kまでの温度圧力条件下において、放射光X線その場観察によりMgAl2O4の相関係について調べた。実験方法 出発物質には多結晶のMgAl2O4を用い、これに圧力マーカーの金粉を10:1 (wt%)の割合で混合し、Anderson et al. (1989)による金の状態方程式から圧力値を見積もった。実験はSPring-8のBL04B1に設置されている川井型装置 (SPEED-mkII)を用いて放射光X線その場観察実験を行った。また、回収された試料に対して微小部X線回折装置および顕微ラマンスペクトルによる測定を行った。実験結果 約36 GPaまで加圧後、荷重を一定に保ったまま加熱を行い、spinelからの相転移を観察した。その結果、1800 K、32.5 GPaにおいてspinelはCaFe2O4構造へ相転移することが観察された。クエンチした後、再び加圧を行い、1800 Kまでの相関係について調べたところ、44.2 GPaまでCaFe2O4構造が安定して存在することが明らかにされた。また、次に1800 K以上の温度条件下での相関係について調べたところ、_から_30 GPaで行った実験では2500 KまでCaFe2O4構造が観察されたのに対し、_から_40 GPaで行った実験では2070 K、41.9 GPaの温度圧力条件下でCaFe2O4構造のX線回折パターンが変化する様子が観察された。その後、温度を2000 Kまで下げると再びCaFe2O4構造が観察され、再度温度を上昇させると2100 Kにおいて同じく未知相が観察された。今回行った温度圧力領域ではFunamori et al. (1998)においてLHDACを用いて研究がなされており、CaFe2O4およびCaTi2O4構造の存在が報告されている。しかし、今回観察された未知相のX線回折パターンはこれら二つの構造とは異なっていた。この未知相は常温常圧下へ回収することが可能で、回収試料に対する微小部X線回折装置および顕微ラマンスペクトルの解析でも同じくCaFe2O4およびCaTi2O4構造以外の高圧相であることが示された。
  • 入舩 徹男, 一色 麻衣子, 阪本 志津枝
    セッションID: k01-10
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    集束イオンビーム装置(FIB)では、高電圧でガリウムイオンビームを加速・照射することにより、試料を観察しながらの精密な加工を行うことが可能であり、ナノテクノロジー分野において重要な基盤技術である。最近、地球科学分野においても微細鉱物の透過型電子顕微鏡(TEM)観察のための薄膜加工への応用がされているが、これまでのところ高圧合成試料の薄膜加工についてはほとんど行われていない。我々はGRCにおいてTEM観察用薄膜加工に特化したFIB(JEM-9310FIB)を導入し、マルチアンビル装置やレーザー加熱ダイヤモンドアンビルセル(LHDAC)による高圧合成試料の薄膜加工、および分析電顕による観察を開始した。ここではその一例として、マグネサイトの相転移X線その場観察実験で得られた回収試料の薄膜加工とTEM観察の結果について報告する。試料は天然の(Mg0.995Ca0.004Fe0.001)CO3マグネサイト微細粉末(粒径~0.1-1.0 μm)に圧力マーカーのPt粉末(粒径<~1 μm)を混合したものを、断熱材としてAl2O3粉末のディスクで挟んだものを用いた。この試料を高圧下においてYAGレーザーにより両面加熱した後、回収試料としてガスケットとともに取り出した。直径50-100 μm、厚さ10 μm程度の円板状回収試料の中心部より、DAC試料の厚み(加圧軸)方向5 μm、直径方向10 μm、厚さ100 nm程度の短冊状の試料をFIBを用いて切り出した。作成した薄膜試料はマイクロマニュピュレーターを用いて取り出し、炭素膜コーティングが施されたTEM観察用メッシュに取り付けた。得られた試料はGRCの200 kV分析電顕(JEM-2010)を用いて組織観察、元素定性分析、および電子線回折解析をおこなった。我々はSPring-8の放射光を用いた高温高圧下X線その場観察により、マグネサイトが115 GPa程度の圧力で新しい高圧相(マグネサイトII)に相転移することを最近報告した(Isshiki et al., 2004)。このマグネサイトIIは常温常圧下には凍結できず、X線その場観察の結果から脱圧に伴いマグネサイトに逆相転移すると判断した。本研究ではマグネサイトの安定領域(MS-29; 30 GPa, 2300 K)、およびマグネサイトIIの安定領域(MS-15; 115 GPa, 2200 K)で合成した2つの試料について、DAC試料の厚み(加圧軸)方向で作成した試料のTEM観察をおこなった。定性分析の結果、試料部はいずれも出発物質の組成と変わらず、マグネサイトの分解やAl2O3断熱材のとの反応は認められなかった。また場所によっては加工に用いられたガリウムイオンの存在が確認された。MS-29においては、試料はマグネサイトであることが確認されたが、ダイヤモンドアンビルのキュレット面から離れた試料中心部では、明らかな粒成長がみられた。MS-15ではAl2O3断熱材に接した部分では微粒(数10 nm)ながらマグネサイトが電子線回折から確認されたが、中心部のより高温の領域では粒界は認められず、電子線回折の結果からも非晶質化していることが明らかになった。このことは高圧相のマグネサイトIIが脱圧過程で非晶質化したことを示しており、X線その場観察では分からなかった事実である。このようにFIBで加工された試料のTEM観察により、従来は明確でなかったLHDAC試料の厚み方向の温度勾配に伴う試料の変化が明確に観察できた。今後このような高圧合成試料のTEM観察において、FIBによる試料の加工は非常に重要な役割を果たすものと考えられる。
  • 安東 淳一, 富岡 尚敬, 松原 一成, 井上 徹, 入舩 徹男
    セッションID: k01-11
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに: 地表から地球深部への水の供給は,沈み込む海洋スラブを構成している含水鉱物の脱水が重要な役割を果している.水の相図を用いて考えると,この様にして脱水した水は超臨界状態にあると考えられる.液体の水と超臨界状態にある水では,多くの物理的化学的な特性が異なるので,地球深部での脱水・その後の水の移動に関係する様々な現象を理解する為には,高圧条件下での水の特性を知る必要がある.本研究では,脱水した超臨界水の挙動と化学的な特性を明らかにする為に,ペリドタイトを用いた高温高圧実験を行い,回収試料の微細組織の観察,及び,化学組成の測定を行った. 実験: 試料には,日高変成帯ウエンザル岩体中に露出するペリドタイトを用いた.このペリドタイトは,オリビン(Fo91,粒径220μmから1.6 mm)と斜方輝石からなる粗粒層と,オリビン(Fo91,粒径10μm から120μm)・スピネルとトレモライト・クロライト・蛇紋石・タルクと言った含水鉱物からなる細粒層が互層したポーフィロクラスティク組織を呈している。また,クロライト・蛇紋石・タルクは,オリビン粒子間やオリビン中の割れ目に沿って,幅数μmから10μmの脈としても存在している.このペリドタイトをダイアモンドドリルによってコア抜きし,直径1.4 mm/長さ2.0 mm と1.5 mmの円柱状に整形した物を高温高圧実験の出発物質とした. 高温高圧実験は,愛媛大学所有の高圧発生装置ORANGE-2000を用いて行った。実験条件は,マントル遷移層に匹敵する圧力(約14.5 GPa)で,500℃から800℃の温度である。この条件は,オリビンのβ相とγ相の2相安定領域に対応する.目的の温度と圧力を保持し,10分から2880分間の様々な時間で加熱を行った. 回収試料はEPMA,分析機能付透過型電子顕微鏡,RAMANによって組織観察,化学組成,相の同定を行った。本研究の重要な特徴は,透過型電子顕微鏡用の試料の作成に収束イオンビーム法を用いた事である.高圧下で超臨界水であった場所は弱部分である為に,イオン薄膜法では選択的に薄膜化され消失していた.しかし,収束イオンビーム法を用いる事で,この弱部分の薄膜作成が可能となった.結果: 回収試料から以下の事がわかった.1)時間の経過と共に,単結晶オリビンの縁から中心に向かってγ相の多結晶体が成長する.このγ相は,重量パーセントの欠損より0.5%-2%の水を含有していると考えられる.2)γ相が分布している領域のみに,含水鉱物の脱水を起源とするH2O包有物(直径1μm以下)が存在する.このH2O包有物はほぼ直線的な外形を有する多角形で,γ相間に存在している.3)相転移前の単結晶オリビンと相転移後のγ相多結晶間には幅約1μmのガラスが存在している.このガラスはオリビン及びγ相に比べてFeとSiに富む.また,オリビンとγ相ではほとんど測定されないCaを含んでいる.この化学組成の特徴は,上述したH2O包有物でも同じである.このガラスとH2O包有物は超臨界水の急冷ガラスと考えられる.4)単結晶オリビンが完全にγ相に転移してしまうと,H2O包有物が希薄な部分からβ相が生成する。このβ相は,重量パーセントの欠損より1%-2%の水を含有していると考えられる.5)含水β相の生成と成長にともない,γ相の含水量が減少する。そして,2880分後には,粒径が10μm-50μm程度の含水β相と10μm以下のほぼ無水状態のγ相が共存する組織となる。この時の,β相とγ相の水の分配係数は約4.5である. これらの観察事実より,高圧条件で脱水した水の特性を考察する.
  • 宮島 延吉, 丹羽 健
    セッションID: k01-12
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに Fe-FexO系物質の高圧下での融解は、地球深部の核_--_マントル境界における物質の振る舞いを考えるうえで、非常に重要である。特に、最近報告されたMgSiO3組成のポストペロブスカイト相の結晶化学的性質から、Feに比べイオン半径の小さなMgがその構造を安定化する可能性が指摘されており(Iitaka et al. 2004)、FeO成分に富む酸化物相の高温高圧下での挙動が注目される。本研究では、表面酸化層を有する鉄箔を高温高圧下で融解させ、その回収試料を分析透過電顕(ATEM)で観察し、融解現象の解析を試みた。実験方法 厚さ約0.03 mmの鉄箔(純度99.9_%_)を、CO2とH2の混合ガスを流した雰囲気制御炉を用い、1070 Kで酸素分圧を制御しながら10 分間保持し、急冷回収し、高温高圧実験の出発物質とした。回収試料表面の酸化層は、反射光学系の微小部X線回折装置を用いたX線回折により、Fe0.94O相であることを確認した。高温高圧実験にはレーザー加熱ダイアモンドアンビルセル(LHDAC)を用い、NaCl圧力媒体中で16 GPa、2200 Kで融解させた。TEM薄膜試料は、Arイオンミリング法で作成した。ATEM解析は、エネルギー分散型X線分光器(EDXS)を付属した加速電圧200 kVの透過型電子顕微鏡(JEOL-2010F)を用い、明視野像、暗視野像、電子線回折像や高分解能像により行った。EDXSを用いた化学組成分析では、合成Fe0.94O粉末を用いて実験的にk-factorを求め、FeのK線 / L線比を用いて間接的に質量吸収厚みを推定し吸収補正を行った。結果と考察 Fe-FexO異相界面付近を中心に観察したところ、FeO側の融解領域は、ナノメートルオーダー(10 nm程度)の微細な結晶の集合体から構成されていた。制限視野回折法では、デバイリング的な回折像しか得られず、高分解能像による格子縞の方向からドメインサイズを推定した。おそらく、レーザー加熱終了時にメルト状態からの急冷過程で生成したFeO微細結晶であると考えられる。ただ、得られた回折像(デバイリング)には、岩塩構造(B1)のFeOでは説明できない面間隔を示す回折線もあり、現在その詳細を解析中である。また当日の発表では、EDXS法を用いた化学組成分析からFe/O比の推定を試みた結果を報告し、Fe-FexO異相界面における融解領域と固領域相の化学組成の違いを考察する。
  • 橘 由里香, 兼岡 一郎, 田賀井 篤平
    セッションID: k01-13
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    ダイアモンドやカンラン岩ノジュールを含む噴出岩であるキンバーライトは、揮発性成分やREEに富み、地球の内部状態を知る上での鍵として大いに期待ができる岩石である。しかしながら、そのソースの生成深度は、ダイアモンドの温度圧力条件から地下150km以下であるとされるのみで、地下2900kmまで未だ諸説ある(Dawson 1972, Smith 1983, Ringwood 1992等)のが現状である。固体同位体組成では「マントル深部起源のOIB(海洋島玄武岩)様の物質」と「上部マントル起源の物質と地殻物質のミキシング」の見分けがつかない。そこで、両者が明らかに異なる値を示す3He/4He比を用いることが有用となる。本研究では、西グリーンランド産のキンバーライト中のオリビンを対象とした。
  • 三宅 亮, 川野 潤
    セッションID: k01-14
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】エンスタタイト(MgSiO3)は5種類の相(斜方エンスタタイト・プロトエンスタタイト・低温型単斜エンスタタイト・高温型単斜エンスタタイト・高圧型単斜エンスタタイト)が報告されている。近年、斜方エンスタタイトと高圧型単斜エンスタタイトの相転移が、その密度変化から、上部マントルで観察される~210km地震波不連続面(Lehmann-不連続面と呼ばれることもある)あるいは~300km不連続面(X-不連続面と呼ばれることもある)の要因ではないかという発表もある。そこで、エンスタタイトの分子動力学シミュレーションを行い、斜方エンスタタイトと高圧型単斜エンスタタイトの相変化に伴う地震波速度変化をこれらの不連続面を想定した高温高圧下で求め、議論を行った。【分子動力学シミュレーション】分子動力学シミュレーションは分子動力学計算プログラム, MXDTRICL (Kawamura 1996, JCPE #077), を用いて行った。原子間相互作用モデルとしてクーロン・近接反発・ファン・デル・ワールスおよびモース項からなる2体中心力形式を用い、パラメーターはMiyake (1998)による値を用いた。クーロン項の計算にはエワルド法を用い、6400粒子系で三次元周期境界条件を課し、2fs/stepにて運動方程式を解いた。初期構造として斜方エンスタタイトはMorimoto & Koto (1969)によるデータを用い、高圧型単斜エンスタタイトについてはOhashi & Finger (1976)による低温型単斜エンスタタイトを出発構造としし、高圧型に相転移させるために2000K, 20GPaで保持したものを初期構造として用いた。地震波速度を求めるために行った温度・圧力条件は1000および1700K, 0-6GPa (斜方エンスタタイト)10 - 16GPa(高圧型単斜エンスタタイト)で行った。温度制御・圧力制御として強制スケーリング法を用いた。【結果】P, S地震波速度は、Voigt-Reuss-Hill平均を用いて見積もった。1000Kの結果、この温度での相転移圧力は約7GPaでは、P地震波速度は約2%、S地震波速度は約12%の明確な不連続が観察され、また1700Kの結果、この温度での相転移圧力は約9GPaもまた、P地震波速度は約2%、S地震波速度は約7%の明確な不連続により、斜方エンスタタイトに比べ高圧型単斜エンスタタイトの地震波速度は速くなるのが観察された。一方ポアソン比はこの相転移によりどの条件下でも約11%小さくなった。そのため、この相転移が~210km地震波不連続面あるいは~300km不連続面の要因として考えられる。
  • 川野 潤, 三宅 亮, 下林 典正, 北村 雅夫
    セッションID: k01-15
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
     含水鉱物は地球深部において水を保持する役割を担っているため、その物性を予測することは、地球内部での水のふるまいを理解する上で非常に重要である。このような地下深部の温度圧力条件における鉱物の物性を推定する手法として、分子動力学(molecular dynamics; MD)シミュレーションがある。本研究においては、主要マントル鉱物であるフォルステライトと、それに水が入った構造をもつヒューマイト族および蛇紋石族の鉱物の弾性特性(体積弾性率、剛性率、地震波速度、ポアソン比など)をMD法により計算することにより、鉱物の物性に及ぼす水の影響を明らかにすることを目的とする。現在まで、地震波トモグラフィーによって、地下深部における地震波速度やポアソン比の分布が得られてきた。MD計算による含水鉱物の弾性特性値を基礎データとして用いれば、このような地球物理学的データを実際の物質と結びつけて理解することができ、ひいては地下深部における水フローの解明につながると期待できる。 含水鉱物のMDシミュレーションを行うためには、新たな原子間相互作用モデルが必要となる。この問題を解決するために、本研究においては珪酸塩鉱物に関する汎用的なMiyake(1998)のモデルに、水素原子とOH基の共有結合に対するポテンシャルパラメーターを追加することで新たなパラメーターセットを作成した。このパラメーターは、ヒューマイト族の鉱物の構造および静水圧下における格子定数の圧力依存性を精度よく再現する。 ヒューマイト族の鉱物は、オリビンMg2SiO4の構造中にブルーサイトMgOHの層がはさまれた構造をとるため、OH基が入ることによる効果を考察するのに適している。そこで新たに得られたパラメーターセットを用いてヒューマイト族の鉱物chondrodite, MgOH·2Mg2SiO4 およびclinohumite, MgOH·4Mg2SiO4のMDシミュレーションを行い、単結晶に関する弾性パラメーターを計算した。フォルステライトと比較した結果、OHが多く含まれている鉱物ほど弾性定数が小さくなることが示された。このときの弾性定数の変化は、フォルステライトのb軸方向でもっとも顕著であった。さらに単結晶についてMD計算して得られた弾性定数を用いて、結晶があらゆる方向を向いた等方体であると仮定したときの多結晶体の地震波速度を導出した。これにより多結晶体に関しても、水が多く含まれる鉱物ほど地震波速度が遅くなり、ポアソン比が高くなることが確認された。また、さらに含水量が大きい蛇紋石族の鉱物であるlizardite Mg3Si2O5(OH)4は、ヒューマイト族の鉱物よりも地震波速度を下げる効果が大きいことが明らかになった。
  • 余越 祥, 桂 智男, 伊藤 英司, 奥部 真樹, 川辺 和幸, 野沢 暁史, 舟越 賢一
    セッションID: k01-16
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    地球の下部マントルの電気伝導度はMT法等の手法により求められており、下部マントル上部で1S/m、下部マントル底部で10S/mであるとされている。地球の下部マントルは主に珪酸塩ペロヴスカイトで構成されると考えられるので、下部マントルの電気伝導度を説明するため、下部マントルの温度圧力条件でケイ酸塩ペロフスカイトの電気伝導度を測定することが重要である。これまでの高温高圧下での電気伝導度測定には、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を使用した測定と、マルチアンビル高圧発生装置で超硬アンビルを使用した測定がある。しかし、DACでは安定的に均一な温度圧力条件を発生させることは困難であるためDACで測定された電気伝導度の信頼性は低い。安定し均一な温度圧力条件を発生させることが出来るマルチアンビル装置では、Xu et al.(1998)により25GPa1400_-_1600度という温度圧力条件で測定がなされている。しかし、彼らの測定では超硬アンビルを用いているため、圧力条件が25GPa以下に限られており、珪酸塩ペロフスカイトの電気伝導度の圧力依存性は明らかになっていない。本研究では、焼結ダイヤモンド(SD)アンビルを用いた高温高圧実験の手法と、高温高圧下での電気伝導度測定実験の手法を組み合わせて、下部マントル中部までの圧力領域で電気伝導度測定を可能にする手法を開発し、鉱物の電気伝導度の圧力依存性の決定を可能にした。SDアンビルでは、高温を発生させることが必ずしも容易でないので、ペロフスカイトに対して測定を行う前に、まず低温相である(Mg0.93Fe0.07)SiO3イルメナイトに対して測定を行った。圧力条件は20、25、30GPa、温度条件は300_-_1200Kである。その結果、活性化エネルギー0.69+-0.04 eV、活性化体積-0.91+-0.10cm3/molという値が得られ、イルメナイトの電気伝導度は大きな圧力依存性を持つことが明らかとなった。次に、(Mg0.93Fe0.07)SiO3ペロヴスカイトに対して25GPaと30GPa、300K_-_1400Kで測定を行い、その結果、活性化エネルギー0.39+-0.04eV、活性化体積-0.06+-0.04cm3/molという値が得られた。即ち、ペロフスカイトの電気伝導度の圧力依存性は、イルメナイトとは異なり非常に小さいことが明らかとなった。その後、より圧力決定精度の高い放射光実験を行い、電気伝導度測定と圧力測定を同時に行った。この放射光実験の結果と、放射光を用いない通常の実験を併せて活性化エネルギーと活性化体積の計算を行い報告する。また、これらの実験結果をもとに、下部マントルの電気伝導度モデルを計算し地球電磁気学的観測から求められた下部マントルの電気伝導度と比較を行う。
  • 西尾 大輔, 藤野 清志, 永井 隆哉, 高藤 尚人
    セッションID: k01-17
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに MgSiO3ペロブスカイトは,下部マントルの主要構成鉱物と考えられている。下部マントルには上部マントルと同様,Fe,Alなどの副成分が存在し,これら副成分のペロブスカイト相への固溶と固溶に伴う構造変化は,下部マントルの鉱物構成と物性に大きな影響を持つ。従って,MgSiO3ペロブスカイトへのFeとAlの固溶,Feの価数,両イオンの相関,固溶量の温度・圧力との依存性,固溶に伴う構造変化は,下部マントルの構造と運動を理解する上で重要な問題である。特に,MgSiO3ペロブスカイトへのFe固溶に関して,Alとの密接な関連性が近年報告されているが,これらの報告は下部マントル上部条件での実験が多く,下部マントル深部条件における詳細は未だ不明である。我々は,出発物質に(Mg,Fe)SiO3-Al2O3系のゲルを用いたレーザー加熱DAC実験,放射光X線回折実験および回収試料の分析電顕(ATEM)観察で,この系の高圧下での相関系とペロブスカイト相へのFeとAlの固溶の問題に取り組んでいる.今回はこれまでに得られた結果について,報告する。実験 (Mg0.65Fe0.35)SiO3-Al2O3系において,その比率(以下MF:Aとする)を1:0,0.95:0.05,0.85:0.15,0.80:0.20としたゲルを出発物質に用いた。出発物質の組成はXRFおよびSEM-EDSによりチェックを行った。出発物質の酸化還元状態により合成後のペロブスカイト中のFeの価数がどうなるかを議論することも目標の1つであるので,今回出発物質となる各ゲルはFe2+となる酸素雰囲気コントロール下で合成した。高圧合成はYLFレーザーにより,DAC中の試料を両面加熱して行った.ガスケットはReを用い,圧媒体にNaClを用いて,40 GPa,2000 K条件で処理した。得られた合成試料については,放射光X線による高圧その場観察および常温常圧回収試料の測定を行った。回収試料については,イオン研磨法により薄膜を作成し,ATEM観察を行った。結果 XRFおよびSEM-EDSによるチェックの結果,ゲルの組成は配合通りであり,NOxの残留および結晶化がないことを確認した。放射光X線観察の結果,MF:A=1:0では,生成相はペロブスカイト(Pv)+スティショバイト(St)+マグネシオウスタイト(Mw)であったが,Al2O3を加えた系では,上記の生成相および圧媒体には一致しない回折ピークが確認された。われわれのグループが以前行った類似の実験から,MF:A = 0.80:0.20の組成においてはコランダムの出現が予測されるが,現段階では最終的な同定に至ってない。レーザー加熱DAC実験の性格上,サンプル内に大きな温度勾配が生じている可能性があり,準安定相が生成していることも考えられる。これらの不明回折ピークは回収試料からも観察されるので,現在ATEMでの観察,組成分析により,生成相および不明ピーク相の同定および組成決定を進めているところである。また,本研究においてはペロブスカイト中に固溶したFeの価数およびAlとの相関が重要なので,今後電顕のEELS法によるFe価数の定量決定も行っていく予定である。 
  • 奥井 眞人, 福島 整, Aurel Mihai Vlaicu, 安井 真也, 山下 満, 元山 宗之
    セッションID: k02-01
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    非破壊でFeの化学状態を分析することを望むならば、これまでメスバウアー分光法は唯一の実用的な方法であると考えられてきた。しかしながら、この方法は極めて高感度というわけではなく、そして放射性同位体元素を使用するため利用できる場所が限られる問題があった。これに対して、蛍光X線分光法(XRF)は、よく知られている定性的かつ定量的な分析に幅広く利用されている方法であり、高分解能で測定された固有X線のスペクトル特性がその元素の化学状態に比例して変化することが既に報告されている。この現象を利用してあらゆる元素の化学状態は決定可能であると考えられる。本報告では、浅間火山の溶岩試料を例にFeの化学状態分析のためにこの高分解能蛍光X線分光法(HRXRF)を応用した結果を示す。HRXRFスペクトルは、二結晶型分光器(RIGAKU 3580E3)を用いて測定された。Feの化学状態の分配のための標準試料として、Fe(III)に対してはFe2O3、及び、Fe(II)に対してはFeTiO3を用いた。上記の2標準試料のFeKα1スペクトルの比較から、FeTiO3 ( Fe(II) )のピーク位置はFe2O3 ( Fe(III) )の位置よりも0.10eV高かった。一方、試料として用いた鬼押出溶岩から得られた溶岩試料のFeKα1スペクトルは、これらの標準試料により得られた位置の間のFe2O3より0.07eV高い位置に現れ、そしてそのピーク幅はFe2O3のものより広かった。ここで、Fe(II)とFe(III)の測定された標準スペクトルを端成分に、非線形最小二乗法に基づいたピーク分離法をこの溶岩試料の測定スペクトルに適応したところ、充分な精度をもってFe(II):Fe(III)は64:36の結果に収束した。同様の手法で分析した浅間B’降下火砕物の2試料についても,Fe(III)の量がFe(II)より多く存在したということが見出された。
  • 溝田 忠人, 坂田 渉
    セッションID: k02-02
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    これまで,主として,ゼオライトヒートポンプに用いる吸着剤の評価を目的に,ゼオライト水のエネルギー的評価を断熱型水蒸気水和熱量計で評価してきた.この方法においては,水和量の評価には,容器ごと重量を測る方法をとった.これは,所定温度で脱水した後,水蒸気水和に伴う発熱を直接測定するものであり,いわゆる積分水和エンタルピーが測定される.多くのゼオライトを構造を破壊しない程度に脱水し,水和させた所,例えば100℃で真空脱水した場合-65_から_-60kJ/molが得られている.この方法により,水和量の異なる状態におけるゼオライト水の評価のためには,脱水状態の異なる試料の水和熱測定,または,段階的な水和に伴う水和熱測定が必要であるが,何れにせよ,水和状態をコントロールすることは難しく,また,熱量測定は可能でも,水和量の評価が困難である. ゼオライトの各含水状態における水和エンタルピー(微分水和エンタルピー)を求めることができれば,より詳細にゼオライト水の状態を解明することにつながる.ここでは,磁気浮上天秤(日本ベル)を用いて,水蒸気圧_-_温度の関係を求め,得られた関係を解析してゼオライト水のエネルギー状態を解明する事を試みた.試料0.5-1gをステンレスバケットに秤量し,加熱オイルを循環するパイプによる温度コントロール可能な真空室内に吊り下げ,上部を磁気結合によって隔絶された天秤と結合する.水蒸気圧は,凝縮を回避するため高い温度に保たれた導管により,水溜に接続することにより,この水溜の精密な温度コントロールによって制御される.磁気結合を外すと,ゼロ点が秤量されるので,ゼロ点ドリフトの無いセミミクロ天秤である.この方法では,各水蒸気圧の測定が平衡状態に近いと考えられる.磁気浮上天秤は,磁力結合によって天秤と試料を結合する結果,水蒸気を天秤内部に導入する必要が無く,水蒸気の特徴である凝縮による問題を回避出来る.しかし,長期に渡る実験の間機密性を保って温度変化させながら試料の重さを測定することは容易でない.これまで,A型ゼオライト,Y型,ベータ型ゼオライト等の測定を行ったが,比較的脱水率の低い状態しか測定できていない.それによると,脱水率の低い状態では,明らかに,絶対値で比較するとこれらの物質の水和エンタルピーは,水の凝縮エンタルピー(ー44kJ/mol at 25℃)より少し大きい.また,細孔径の大きな物質の水和エンタルピーはより水の凝縮熱に近い.これらの結果より,各水和状態におけるゼオライト水のエントロピーが求まる.水や氷の状態が,純粋な水素結合による凝縮系と考えると,ゼオライト水には,余分な場(水素結合相互作用以外)を考える必要がある.第1に考えられるのは,交換性陽イオンの存在による静電場の影響である.狭い空間における水分子双極子を仮定して,そのエネルギーを評価出来るので,水和エンタルピーの値はそのエネルギーを直接測定していると考えられる.第2には,水の凝縮密度による,氷構造より密な構造を採れるかどうかという問題があるが,エネルギー的には,静電場のモデルだけで十分説明つきそうである.
  • 赤荻 正樹, 山本 僚, 糀谷 浩
    セッションID: k02-03
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    マントルで重要なマグネシウムケイ酸塩と同様に、いくつかのゲルマニウム酸塩は高温高圧下でイルメナイト−ペロブスカイト転移を起こすことが知られている。しかし、従来それらの相関係は詳しく研究されてこなかった。今回MgGeO3、ZnGeO3、MnGeO3の高温高圧下の相平衡関係を明らかにした。 高圧実験には、川井式6-8型マルチアンビル装置を使用した。出発物質には、輝石型MgGeO3、イルメナイト型ZnGeO3、ZnO+GeO2、イルメナイト型MnGeO3を合成して用いた。これらの出発物質をレニウムカプセルに入れ、14-27GPa、1200-1800Cに1時間保持し、急冷試料を微小部X線回折装置で調べた。また高圧相(後述のニオブ酸リチウム型相)を出発物質として逆反応実験を行った。 MgGeO3では、1600C、23GPaでイルメナイト相が高圧相に転移し、その急冷生成物はニオブ酸リチウム(LiNbO3)型の相であった。すでにLeinenweber et al. (1994)がその場観察X線回折法で示したように、この相は高圧下では斜方晶ペロブスカイト構造であるが、減圧過程でLiNbO3型に転移する。そのため、LiNbO3型相が合成された圧力温度条件では、ペロブスカイト相が安定であるとした。MgGeO3のイルメナイト−ペロブスカイト転移の相境界線は、P(GPa)=36.2_-_0.008T(C)と決められた。1600CでのMgGeO3のイルメナイト−ペロブスカイト転移圧力はほぼMgSiO3の転移圧力と同じであるが、相境界線の勾配はより大きな負の値になっている。 ZnGeO3とMnGeO3では、1200Cでそれぞれ23、16GPaでイルメナイト型が高圧相に転移し、この高圧相を常圧に回収したものはLiNbO3型であった。この結果から、MgGeO3と同様に、高圧相がペロブスカイト型であると解釈された。ZnGeO3のイルメナイト−ペロブスカイト転移の相境界線は、P(GPa)=26.4_-_0.003T(C)であった。MgGeO3とZnGeO3の相境界線がいずれも負の勾配を持つことは、ペロブスカイト相がイルメナイト相よりも高いエントロピーを持つことを示している。このことは、比較的小さなMg2+、Zn2+イオンがペロブスカイト構造の大きな8_から_12配位サイトに入ることによって生ずる格子振動エントロピーの増大によって説明できる。今回イルメナイト−ペロブスカイト転移の圧力を決定した三つのゲルマニウム酸塩の中で、MnGeO3の転移圧力が最も低いことは、最も大きいMn2+イオンがペロブスカイト構造に一番適合することを反映していると考えられる。
  • 瀬山 春彦, 王 道元, 相馬 光之
    セッションID: k02-04
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    岩石や土壌は様々な鉱物で構成されており、表面の不均一な元素分布とその化学結合状態を画像として測定できれば、風化などの表面化学反応過程の解明に役立つと考えられる。そこで本研究では、X線光電子像を用いた表面のイメージング(X線光電子顕微鏡法)による、花崗閃緑岩中の造岩鉱物のケイ素の状態分析を試みた。岩石薄片試料の石英と黒雲母の境界領域で、走査型のX線光電子分光装置を用いてSi 2p光電子像(0.5×0.5 mm)を測定し、得られた光電子像を二つの鉱物のSi 2p光電子スペクトルのケミカルシフトに基づいて分離した。その結果、Si 2p光電子の結合エネルギー差が1 eV程度あれば、ケイ素の化学結合状態別イメージングが可能であることが分かった。
  • 大川 真紀雄, Armbruster, Thomas, Galuskin, Eugeny
    セッションID: k03-01
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    Vesuvianite is a well-known rock-forming mineral with complex crystal chemistry and structure. High-symmetry (P4/nnc) vesuvianite occurs in metamorphic calc-silicate rocks mostly in skarn, and formed at high temperatures. Low-symmetry (non-P4/nnc) vesuvianite occurs in rodingites, in veins found in mafic rocks and serpentinites and rarely in metamorphic calc-silicate rocks in which it formed at relatively low temperatures during retrogressive metamorphism. In low-symmetry vesuvianite, two types of possible ordered arrangements (P4/n and P4/nc) exist. There are few research reports of vesuvianite with P4nc symmetry than those of P4/n. An infrequent high-temperature skarn is developed in Kushiro, Tojyo-cho, Hiroshima prefecture, Japan. The formation temperature of the skarn is estimated at about 800°C, although skarnforms generally at about 500°C. Gehlenite and spurrite formed primary at the skarn. Vesuvianite formed by retrograde metamorphism of those minerals. The purpose of this study is to clarify the characteristic of the crystal structure of the vesuvianite from the high-temperature skarn. Special attention is paid on the structural and chemical differences among several structural types of the vesuvianite. 30 small single-crystals were picked up from one hand-specimen that collected in high-temperature skarn in Japan. 20 crystals were ground into spheres, but polygonal shapes of 10 crystals were retained without grinding. These crystals were mounted on fine glass capillaries. The single-crystal X-ray intensity data were collected on a Siements SMART three-circle diffractometer with a CCD detector using graphite-monochromatized MoKα radiation (50KV, 40mA) and were corrected for Lorentz and polarization factors. Subsequent to the X-ray diffraction experiments, chemical analyses were carried out for those crystals. The structural refinements were made using the program SHELX. 30 structure data sets were determined. In the present study, the symmetries of vesuvianites were determined by precise analyses of the systematic absences of reflections. Tojyo vesuvianites are classified into 3 symmetry types. (1): P4/nnc high symmetry (2): Mixtures between P4/n and P4/nc (3): Almost complete P4/nc Moreover (2) and (3) are both divided into two sub-groups by chemical compositions. (2)a: with hydrogarnet-like substitution at tetragonal site (2)b: without hydrogarnet-like substitution (3)a: with boron and F (3)b: without boron Those groups can be briefly classified with cell parameters. Almost complete P4/n structure was not found in this study. It can be concluded that the crystals of those structural types were grown during the several stage of retrograde metamorphism.
  • 赤坂 正秀, 木村 健彦, 永嶌 真理子
    セッションID: k03-02
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    島根半島古浦ヶ鼻産バビントン石の化学組成、結晶構造を検討した。バビントン石は黒色で稜が0.5–1 mm程度の菱面体結晶である。貫入型双晶しているものもある。セクターゾーニングおよび累帯構造がある。中心部から周辺部に向けてFeが増加し、MnおよびAlが減少する。各セクターのMg/Fe, Al/Fe, およびMn/Feの各比が異なる。平均化学式は、(K0.004Na0.006Ca2.009)(Mg0.113Mn0.094Fe1.696Ni0.002V0.003Cr0.001Ti0.009Al0.058)Si5.005O14(OH)である。メスバウアー分光分析の結果、Fe2+とFe3+のダブレットが認められ、Fe2+:Fe3+は45:55であった。リートベルト解析によって精密化した2つの6配位席におけるFe席占有率は、それぞれ0.74および0.92であった。
  • 永嶌 真理子, 赤坂 正秀
    セッションID: k03-03
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    ウラルSarani産ShuiskiteのX線リートベルト法で結晶構造解析を行った.化学組成はCaO 21.0–22.2 wt.%, MgO 2.8–3.8 wt.%, Cr2O3 12.9–16.3wt.%, Al2O3 14.7–17.0 wt.%, total Fe2O3 0.0–0.4wt.%, SiO2 34.3–36.4 wt.%である.構造解析の結果,格子定数はa = 8.8155(2)Å, b = 5.9371(2)Å, c = 19.1528(4)Å, β = 97.608(2)°, V = 993.61(4)Å3,6配位席の席占有率は XサイトがMg0.44Al0.32Cr0.24,YサイトがAl0.75Cr0.25であった.X, Yサイトにおける席選択性を考慮するとIvanov et al. (1981)によるYサイトのみにCrが分布するという解釈は誤りである.
  • 龍 徹, 木股 三善, 興野 純, 西田 憲正
    セッションID: k03-04
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    [はじめに] イキシオライトとコルンブ石は,互いに密接な関係を持つNb,Ta鉱物である。 (Grice et al., 1976)。どちらも一般に花崗岩ペグマタイトの副成分鉱物として産出するが (e.g. Cerný and Nemec, 1995),イキシオライトの日本からの産出は報告されていない。 コルンブ石は,化学式AB2O6,A = Fe2+,Mn2+,B = Nb5+,Ta5+で,結晶構造は空間群Pbcna = 14.23, b = 5.72, c = 5.10 Å, Z = 4 である (e.g. Wenger et al., 1991)。イキシオライトは,化学式 (Nb5+,Ta5+,Ti4+,Sn4+,Fe2+,Mn2+)O2 = 1/3・AB2O6であり (e.g. Wenger et al., 1991),コルンブ石の陽イオンがA,B席に無秩序に占有した結晶構造 (空間群Pbcna = 4.74, b = 5.73, c = 5.16 Å, Z = 4) と解釈されている (Nickel et al., 1963)。イキシオライトは一般にコルンブ石よりもTi,Sn,Sc,Wを多く含むことができ (e.g. Wise et al., 1998),天然では,完全な無秩序構造 (イキシオライト) から,完全な秩序構造 (コルンブ石) まで様々な程度の中間物が報告されている (e.g. Ercit et al., 1995)。 イキシオライトの結晶構造はGrice et al. (1976) によって精密化されただけで,等方性温度因子を用いて,R = 14.0 %であった。この原因は,実際にはNb,Ta鉱物の多くは反射電子像においてパッチ状構造などの複雑な鉱物組織を示すにもかかわらず (e.g. Lahti, 1987),イキシオライトとコルンブ石が共生する試料を結晶構造解析したことによると考えられる。 そこで本研究では,福島県石川山花崗岩ペグマタイト産イキシオライトについて,鉱物組織を観察して粉末X線回折により同定し,反射電子像においてその単結晶を抉りだして構造解析を行い,その結晶構造を精密化した。[結果] 粉末X線回折の結果,コルンブ石の特徴である反射が認められ,試料中にコルンブ石の存在が認められた。EPMAによる反射電子像から組織の均質な部分を選び,定性・定量分析した結果,化学組成は (Nb0.361, Ta0.271, Ti0.035, Fe0.200, Mn0.149)O2であった。単結晶構造解析の結果,試料はイキシオライトの結晶構造をもち,結晶構造は異方性温度因子を用いてR = 3.24 % まで精密化された。[考察] 単結晶構造解析から計算したイキシオライトの粉末X線回折図形は,ICDD (No. 71-1808) によるイキシオライトの粉末X線回折データと一致する。このことは,石川山花崗岩ペグマタイト産の鉄コルンブ石中には,イキシオライトが共生することを示す。イキシオライトのM-O平均結合距離と八面体の歪みは,コルンブ石の結晶構造のFe,Mnの入るA席と,Nb,Taの入るB席の値の,中間的な値を示す。これは,イキシオライトの構造では,コルンブ石の陽イオンが無秩序配置している結果によると考えられる。
  • 越後 拓也, 木股 三善, 興野 純
    セッションID: k03-05
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
  • 興野 純, 木股 三善
    セッションID: k03-06
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    Light-induced degradation in realgar has been studied by means of four-circle single-crystal X-ray diffraction and X-ray photoelectron spectroscopy. Due to the alteration of realgar exposed to light, the a lattice parameter and c sinβ value increases linearly, whereas the b lattice parameter remains substantially constant. The anisotropic variations of the lattice parameters led to a continuous increase of the unit cell volume. But there is no correlation between the continuous increase of the cell volume and the bond distance variations in As4S4 molecules, since As4S4 molecule in the unit cell expands itself during light exposure. The most pronounced change was observed in the distance between centroids in As4S4 cage. That is, the spread of As4S4 intermolecular distances is responsible for the unit cell volume expansion. In addition, the O 1s peak becomes apparently higher and greater as the increase of light exposure time. This result substantiates the following reaction; 5As4S4 + 3O2 -> 4As4S5 + 2As2O3, and the formation of As4S5 molecule with the light exposure. The results obtained seem to indicate that the additional sulfur at As4S4 molecule affects geometrically the anisotropic expansion for a and c axis, and the As4S4 molecule in realgar transform to pararealgar via As4S5 molecule.
  • 沼子 千弥, 中北 幸恵, 小藤 吉郎
    セッションID: k03-07
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    ギブサイト(Al(OH)3)が加熱脱水によりコランダム(α-Al2O3)に変化するその過程には様々な結晶構造を有した中間相が多数出現する。本研究では、これら中間相の出現の様子とその結晶学的関係を調べるために、単結晶のギブサイトと昇温ステージを用いたin- situ 単色ラウエ実験を行うことを試みた。実験はKEK PF BL4B-1に既設の微小結晶X線回折測定システムを用いて行った。昇温ステージに固定したギブサイト単結晶に対してSi(111)二結晶モノクロメータにより1.0Åに単色化されたSR光を照射し、試料を通過した回折X線をイメージングプレートにより記録することにより単色ラウエ測定を行った。実験は常圧・空気雰囲気にて行った。  本研究グループはこれまでの一連の研究により、ギブサイトの脱水過程において、200_から_300℃付近に先行研究では記載されていなかった新しい相(X相)が出現することを明らかにしたが、この実験によりその量的な変化を詳細に追うことに成功した。特にこの相はギブサイトからベーマイト(AlOOH)に脱水が起こる時に出現するため、これら3者の相の結晶学的相関には興味が持たれた。また、X相は600付近で出現し触媒活性を持つことで知られるγアルミナと類似した比較的広がった回折点を示したことから、このX相がγアルミナへの直接の前駆体である可能性も示唆された。
  • 中川 武志, 木原 國昭
    セッションID: k03-08
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
     メラノフロジャイト(melanophlogite)は構造中に分子を包接しているシリカクラスレート鉱物である。この鉱物は65℃を相転移点として、高温型は空間群Pm3n、格子定数a=13.463Å(200℃)(Gies 1983)、低温型は空間群P42/nbcで高温型の2x2x1の単位胞をもつ超構造である(Nakagawa et al. 2001)。Gies(1983)においてSi-O結合方向に垂直な熱振動が酸素原子で非常に大きいことを示し、その原因は酸素原子のdisorderであるとした。しかし、その詳細に関して未だ報告がない。本研究では高温型の非調和項を含めた構造精密化によってその熱振動の原因を解明した。高温型は低温型のdisorderとして解釈されるものと考えられる。
  • 杉山 和正, 紋川 亮, 杉山 武裕
    セッションID: k03-09
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    鉄鋼製錬プロセス原材料(焼結鉱)の主成分である多成分カルシウムフェライト相の結晶構造解析を行った。
  • 白井 恭子, 田原 岳史, 保倉 明子, 中井 泉, 横山 一己, 寺田 靖子, 加藤 泰浩
    セッションID: k03-10
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
  • 中井 宗紀, 杉山 和正, 吉川 彰, 福田 承生
    セッションID: k03-11
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    Al2O3⁄Y3Al5O12共晶体は、耐熱・耐酸化強度材料の有力候補として注目を集めている。Al2O3成分の3mol%および5mol%をSc2O3 で置換すると、典型的な共晶体文象組織は、文象組織を有するラメラが積層する複雑な微細構造へと変化する。しかし、基本組成Al2O3⁄Y3Al5O12共晶体で観察される結晶方位関係<001>コランダム⁄⁄<112>YAG⊥ 凝固方向は維持されていた。一方、Al2O3成分の10mol%をSc2O3 で置換した試料では、ロッド状YAG相が凝固方向に晶出し、共晶体部分は不均一なコロニー状構造となる。この新規な微細構造は、<001>コランダム⁄⁄ <100> YAG⁄⁄凝固方向の結晶方位関係によって構成され、上記基本方位関係と大きく異なる。ロッド状YAG相では、酸素八配位席にScが濃集する。一方、Sc2O3を含むYAG相単結晶では、特にAl2O3成分の少ない領域でScは酸素六配位席に濃集することが判明した。
  • 小松 一生, 鍵 裕之, 永井 隆哉, 栗林 貴弘, Jhon B. Parise, 工藤 康弘
    セッションID: k03-12
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    Kalicinite (KHCO3)は、室温大気圧下においてphase II (P21/a)が安定相であり、318Kで高温相であるphase I (C2/m)へ秩序無秩序型の相転移を起こすことが知られている(e.g. Kashida and Yamamoto, 1990)。さらに最近、Kaliciniteの粉末試料について、X線回折(Nagai et al., 2002)や中性子線回折および赤外・ラマン分光法(Kagi et al., 2003)によって、2.8Gpaでの高圧相への可逆的な相転移の存在が確認された。しかし、高圧相の格子定数や空間群については明らかになっていない。そこで本研究では、kalicinite高圧相の結晶構造解析を目的として、単結晶を用いた高圧下その場X線回折を行った。 本研究に用いた試料は、過飽和溶液から室温で析出させて得られた単結晶である。高圧下におけるX線回折実験には、ダイアモンドアンビル高圧発生装置とイメージングプレートX線回折装置(Rigaku, R-axisIV++)を用いた。圧力媒体はメタノール:エタノールの4:1混合液、ガスケットはSUS301ステンレスを用いた。 光学顕微鏡下でダイアモンドアンビルセル内に封入した試料を徐々に加圧していくと、転移圧力において急激な体積の変化と、転移双晶の形成が観察された。高圧相のX線回折パターンを見ると、双晶面に対し垂直な方向にストリークが見られることから、非常に頻繁に双晶を繰り返していることがわかる。得られた逆格子点は、三斜晶系の双晶によって指数付けが可能であるが、結晶構造の詳細や常圧相であるphase I,IIとの関係については、現在解析中である。
  • 大高 理, アンドロー ドゥニ, ブビエール ピエール, シュルツ エマニエル, メズアー モハメド
    セッションID: k03-13
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    The phase relations and equation of state of pure ZrO2 (Baddeleyite) were investigated up to 100 GPa by means of in situ observation using laser heating in a diamond anvil cell and synchrotron radiation. A cotunnite (PbCl2)-type phase, which appears above 12.5 GPa, is stable to a pressure of 100 GPa and a temperature of 2500 K. No post-cotunnite phase was observed within the present experimental conditions. The unit-cell parameters and the volumes of the cotunnite-type ZrO2 were determined as a function of pressure at room temperature using a laser-annealing technique. The cotunnite-type ZrO2 shows rather isotropic compression. The bulk modulus calculated using Birch-Murnaghan’s equations of state is 278 GPa, which suggests that the high-density ZrO2 is a candidate for potentially very hard materials. In situ high-temperature experiments made below 12.5 GPa revealed that a tetragonal fluorite (CaF2)-type phase is stable up to 3000 K although a cubic fluorite-type phase has been assumed to exist at this high-temperature regime. The result suggests the possibility that stoichiometric ZrO2 does not show the cubic structure up to the melting temperature.
  • 工藤 康弘
    セッションID: k03-14
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    地球の上部マントルの主要構成鉱物であるforsterite,Mg2SiO4は上部マントル下部でwadsleyite,Mg2SiO4,そして ringwoodite,Mg2SiO4へと相転移する.従来無水と考えられていたマントル鉱物に極微量のOHが存在する可能性を最初に指摘したのはMartin and Donnay (1972)である.深さ400km-550kmのマントル遷移層に安定領域をもつwadsleyite,Mg2SiO4については,Smyth(1987)がPaulingのbond strength sumの結果から, Siに配位していない唯一の酸素であるO1サイトがOHとして水素を取り込み得ると最初に指摘した.Inoue (1994)は3.1 wt% のH2Oを含む含水wadsleyiteの合成に成功し,結晶構造中のO1サイトが全て OHのとき,Mg2SiO4の組成について計算するとH2Oの量が 3.3 wt%となることから,含水wadsleyiteの最大含水量を3.3 wt%と推定した.これがwadsleyiteの最大含水量についての最初の推定であり,実験結果ともよく一致していることから一般に受け入れられている.一方,forsterite,Mg2SiO4とringwoodite,Mg2SiO4については, Siに配位していない酸素原子のサイトが結晶構造中に存在しないので,wadsleyiteと同じ論理は適用できず,現在までその含水量の上限を推定する方法は見出されていなかった.実験的には,forsteriteには,wadsleyite やringwooditeにくらべ僅かしかH2Oが含まれず,ringwooditeには wadsleyiteと同じか僅かに少ない量のH2Oが含まれると考えられている(Yang et al., 1993).最近の研究結果では, forsterite中にKohlstedt et al. (1996)は1500 wt ppm (0.15 wt%)のH2O,Chen et al. (2003)は 7600 wt ppm (0.76 wt%)のH2Oを報告している.RingwooditeにはKohlstedt et al. (1996)は2.7 wt%のH2O,Yusa et al. (2000) は2.8 wt%のH2Oを報告している.本研究では,Mgが2Hで置換されるとして,forsteriteとringwoodite における最大含水量についての結晶学的制約条件を考察した.Siが 4Hで置換されるモデルは,Mgを2Hで置換し,しかる後にSiを 2Mgで置換する(Siを取り出し2Mgを戻し,Hの位置を変える)とすれば同じであるから,最大含水量についての結晶学的制約条件の考察にはMgが2Hで置換されるモデルのみで十分である.本研究の結晶学的制約条件は,Mgが2Hで置換されHが配位すれば酸素原子がわずかに位置を変え歪みが生じるが,そのようなunoccupied Mg siteの歪みが三次元的にバランスをとり,かつunoccupied Mg site同士が最も接近し得る限界が最大含水量を与えるとして得た.その結果,ringwoodite における最大含水量はwadsleyiteと同じく3.3 wt%,forsteriteの最大含水量はwadsleyite の1/4の0.78 wt%という結果を得た.
  • 糀谷 浩, 城戸 美早, 赤荻 正樹
    セッションID: k03-15
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    SrSiO3は約11 GPaでSrSiO4とSrSi2O5の2相に分解する。SrSi2O5相のX線回折パターンはこれまで珪酸塩鉱物において報告されていない未知のものであった。そこで、SrSi2O5組成を持つ高圧相を16 GPa, 900℃で高圧合成し、SrSi2O5相のみのX線回折プロファイルを取得した。そして、そのX線回折プロファイルについてBaGe2O5_III_の結晶構造をモデルとしてリートベルト解析を行った。その結果、空間群Cmcaの斜方晶系において、格子定数はa=5.2389(1)Å, b=9.2803(2)Å, c=13.4411(2)Åと決定された。頂点共有したSiO6とSiO4多面体からなる層状の骨格が基本となっている。ストロンチウムのサイトはそのSi-O多面体からなる層の間に位置し、酸素12配位である。また、平均Sr-O距離は2.729Åで、比較的大きなイオン半径を有する陽イオンを収容することが可能な構造であることを示している。
  • 遊佐 斉, 赤荻 正樹, 佐多 永吉, 糀谷 浩, 加藤 義登, 大石 泰生
    セッションID: k03-16
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    高圧下で安定なシリケイトペロブスカイトは、一気圧の状態で不安定で、温度を上げるとアモルファス化し、極端な場合CaSiO3ペロブスカイトのように室温に回収することすら困難なものもある。このような場合、高圧下でのその場観察により構造を知る以外に方法はない。SrSiO3(擬ウラストナイト相)は、最近のマルチアンビルを用いた回収実験により、20GPa以上の圧力で高温実験をおこなった場合、やはり減圧時にアモルファスになるとの報告がなされている。そこで本研究では、その高圧相が凍結できないペロブスカイト相であるという予測のもとに、高圧下でその場X線回折実験をおこなった。 実験はSPring-8(BL-10XU)にて対称型ダイヤモンドアンビルセルを用い、Nd:YLFレーザー加熱システムを運用することによりおこなった。回折X線は2次元検出器のイメージングプレートを用いた角度分散法により検出し、30keVの入射エネルギーで、2θ=17°までの領域で全周のデバイリングを収集した。出発試料は常圧相のSrSiO3(擬ウラストナイト相)の粉末で、0.3wt%のプラチナをレーザー光吸収体として分散させたものである。試料を35GPaまで加圧後、加熱前の回折パターンには、プラチナ以外のシャープな回折線は存在せず、ブロードなハローが観察された。これは、圧力誘起アモルファス化に伴う変化と考えられる。摂氏1300_-_1600 度でのレーザー加熱後、明瞭な回折線が検出された。半値幅はシャープであり、レーザー加熱により、試料内部の圧力状態が緩和、改善することを示しているものと思われる。また、圧力は加熱前に比べて25%ほど減少していたことから、高密度相への転移をうかがわせた。一気圧に減圧後のパターンは再びアモルファス様パターンを示した。 加熱後に出現した回折線17本を解析したところBaTiO3型の六方晶ペロブスカイト構造(P63/mmc)で指数付けが可能であった。25GPaでの格子定数はa=5.0683(3)Å, c=12.4196(9) Å, V=276.29 Å3である。この体積に、CaSiO3ペロブスカイトの圧縮率を使って一気圧の体積を推定すると、モル体積は、常圧安定相の擬ウラストナイト相と比較して32.6 % 縮んでいることがわかる。これは、CaSiO3のウラストナイトと立方晶ペロブスカイト相の一気圧での体積差(31.1 %)と良い一致を見る。 ABO3組成のペロブスカイト構造は、各イオンのイオン半径比により、その構造の安定性や対称性の理想立方晶からのずれが系統的に説明されている。その代表的な指標はトレランスファクター(許容度因子)t = (rA+rO)/√2(rB+rO)であり、立方晶をとりうるのは1>t>0.9と比較的狭い範囲に限られている。tが0.9より小さいときはBO6八面体のバックリングにより斜方晶構造をとることが知られている。シリケイトペロブスカイトではMgSiO3の場合、その例に相当する。CaSiO3は、ほぼt=1であるが、SrSiO3は1を超える。この場合、SiO6八面体が周期的に面を共有することでペロブスカイト構造を維持しているものと考えられる。
  • 栗林 貴弘, 田中 雅彦, 工藤 康弘
    セッションID: k03-17
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    放射光を用いて7.6GPaまでの単結晶X線回折実験を行い,高圧下におけるnorbergiteの結晶構造を解析した.
  • 廣瀬 正之, 木原 國昭, 藤波 修平, 奥野 正幸, 篠田 圭司
    セッションID: k03-18
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに.常温で見られるトリディマイトにはいくつかの結晶相が知られている.それらの中には試料調整のための粉砕で構造変化を示す事まであることが知られるようになった.従って報告されているデータがどの状態のものであるのか常に注意しなければならない.特に粉末試料を用いる研究では結果の解釈に格段の注意が必要である.本研究では単斜晶系トリディマイト(MC)の粉末試料及び結晶破片(しばしば双晶している)についてDTA, X線回折,ラマン散乱データを室温から500℃の範囲で測定し,またそうして得られた結晶構造に基づいてラマンスペクトルの計算を行った. また全振動数領域に渡って,特徴的な変位パターンを求めた.試料調整の問題点. 珪石レンガ表面に成長した結晶とその粉末試料を使用した.粉末試料の解析から乳鉢によるMCの粉砕化に伴ってMX-1と呼ばれる“変形相”が得られること,MX-1比率が加熱冷却の繰り返しで増加すること等を確認した.また適当な熱処理によってこの状態を殆ど純粋なMCに戻す事が出来ることを確認した.単結晶回折では微小片を集めて,単一ドメインに近い試料を選んだ.ラマン散乱では結晶砕片(双晶)を用いた.これら単結晶測定では全てMCであることが確認された.MC構造の温度変化と相転移. 以前の粉末試料による研究で報告されているようなMCとその高温側の斜方相(OP)の間の中間相の存在(De Dombal & Carpenter,1993; Cellai et al.,1994)は確認されず,単結晶実験(ラマン,X線回折)によればMC相は直線的な温度変化を示し,110℃でOPに急激に変化する事が明らかになった.クリストバライトの正方_-_立方転移等と類似した典型的な1次転移であり,石英のa-b転移やトリディマイトの高温相間転移の様な特異性を示さない.OP構造解析. OP相はその上の斜方相OCの3x1x1超構造で,超構造反射は弱く,しかも温度変化に“敏感”であるようにみえる.従来の報告(Kihara, 1977)は座標,温度因子の精度において改善の余地があり,この座標に基づくスペクトル計算は満足いく結果を与えなかった.今回はCCD検出器による微小結晶の強度測定により,規則構造のモデルによる精密化に成功した.ラマンスペクトルとフォノンモード. スペクトルの計算は今回決定した構造パラメタに対してプログラムVIBRATZ (Dawty, 1987)を使い,またEchepare et al (1978)のvalence-force-field (VFF)を用いて行った.計算スペクトルは測定と良い一致を示し,これにより振動数と変形パターン,およびそれらの関係について詳細な議論が可能になった.またSiO4四面体の動的な“disordering motion”と関係付けられる低振動数フォノンモードを確定し,disorderモデルについて提案する.
  • 西 文人, 宮脇 律郎
    セッションID: k03-19
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    Wollastonite(CaSiO3)の結晶構造は、双晶モデルが伊藤(1953)により提案されたが、実際の結晶構造はMamedov and Belov(1956)、Buerger and Prewitt (1963)、Peacor and Prewitt(1963)らにより解明および精密化されており、それによると基本構造はSiO4による鎖がb軸に平行に走る構造である。今回はこのSiを、量を変化させながらGeで置換させた4種類のWollastoniteの結晶合成を行い、それらの結晶構造も解明したので報告したい。(化学組成及び格子定数)Ca(Si0.75,Ge0.25)O3(75Woと呼ぶ)a=7.970(1), b=7.369(1), c=7.114(1), alpha=90.07(1), beta=95.07(1), gamma=103.43(1)Ca(Si0.60,Ge0.40)O3(60Woと呼ぶ)a=7.983(2), b=7.382(1), c=7.128(1), alpha=90.07(1), beta=95.06(1), gamma=103.43(1)Ca(Si0.15,Ge0.85)O3(15Woと呼ぶ)a=8.076(1), b=7.494(1), c=7.232(1), alpha=90.10(1), beta=94.65(1), gamma=103.48(1)CaGeO3 (0Woと呼ぶ) a=8.125(2), b=7.554(1), c=7.292(2), alpha=90.11(3), beta=94.40(3), gamma=103.48(1)Geの含有量が増加するにつれて各格子軸の長さがほぼ直線的に増加していることが分かる。(SiとGeの置換)Wollastoniteの構造では、SiあるいはGeが占位できる結晶学的な独立なサイトは3つであり、それらをT1(座標でx=0.18, y=0.39, z=0.27周辺)、T2(座標でx=0.18, y=0.95, z=0.28周辺)、 T3(座標でx=0.41, y=0.73, z=0.05周辺)と呼ぶことにする。以下に最小自乗法で求められた各サイトにおけるSiとGeの占有率を表す。75Wo では T1=Si84.7(2)%+Ge15.3(2)%, T2=Si84.6(2)%+Ge15.4(2)%, T3=Si55.8(2)%+Ge44.2(2)%60Wo では T1=Si71.0(3)%+Ge29.0(3)%, T2=Si71.9(3)%+Ge28.1(3)%, T3=Si37.1(3)%+Ge62.9(3)%15Wo では T1=Si20.9(2)%+Ge79.1(2)%, T2=Si20.6(2)%+Ge79.4(2)%, T3=Si3.5(2)%+Ge96.5(2)% ここでの特徴としては、まずそれぞれ成分の異なるWollastoniteにおいてT1サイトとT2サイトのGeの占有率がほぼ同じであること、さらにT3サイトに比べ、T1とT2の両サイトにはGeが濃集できないということである。これらの原因としては、T1とT2はほぼ同様な幾何学的環境を有していること、さらにT1に配位しているO5、およびT2に配位しているO6が、それぞれ2個のCaにしか配位できず、その結果としてボンドバレンスが不足し、その代償としてT-O間の距離を短くしていなければならず、それらを少しでも長くしてしまうGeによる置換を許さないということではないかと考えられる。
  • 伊東 洋典, 西 文人, 栗林 貴弘, 工藤 康弘
    セッションID: k03-20
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    常温常圧下でα’L相の構造をもつCa1.5Sr0.5SiO4の試料結晶を用いて常圧および2.9GPaで単結晶X線解析を行い、α’L相の超周期構造の原因について考察した。常圧下でのデータの解析の結果、M1-M3O10多面体の大きさとSiO4四面体の向きとの間には強い相関があり、SrとCaのイオン半径の差を緩和するためにSiO4四面体の向きが変わると考えられる。また、2.9GPaの高圧下でのデータの解析の結果は、イオン半径の大きいSrの方が、イオン半径のより小さいCaよりも圧縮しにくいことを示しており、Mサイトの圧縮がイオン半径ではなくSiO4四面体に支配されていることを示している。
  • 山川 純次, 川瀬 雅也, 小林 祥一
    セッションID: k03-21
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    岡山県阿哲郡大佐山産Epidoteの結晶構造と結晶化学的性質についてXRD, EPMA, 単結晶X線回折法およびメスバウアー分光法で研究した。試料の化学組成はCa2.164(Al2.411Fe3+0.451)2.862Si3.014O12.000(OH)1.026と決定された。格子定数はa=8.886, b=5.606, c=10.150 A, beta=115.4 deg, monoclinic, P21/cと決定された。結晶構造解析での最終的なR因子は0.031となった。したがってXps = Fe3+/(Fe3++Al) は0.1576となった。この結晶構造中の水素結合はO(4)-H-O(10)として形成されていた。水素結合の角度は117.6度であった。他の結晶構造解析例と比較すると、水素結合角はXpsに比例して変化する事がわかった。M1およびM3サイトに存在するFe3+ の量はメスバウアー分光法で決定され、それぞれXFe3+,M1=0.061 and XFe3+,M3=0.099となった。しかしこの試料の非平衡秩序化状態は決定できなかった。
  • 小暮 敏博, 坂野 靖行, 宮脇 律郎
    セッションID: k03-22
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    組成的に金雲母のKをNaで置換したアスピドライト(aspidolite)の層間構造は従来考えられているものとは異なることをHRTEM,電子回折より明らかにした。この雲母では層間領域を挟む2つの四面体シートが約a/6ずれている。この構造モデルから計算したX線回折パターンは実験のパターンをよく説明した。またずれの方向により,アスピドライトには三斜晶系と単斜晶系をもつことをX線回折により確認した。
  • 石田 直哉, 木股 三善, 興野 純, 八田 珠郎
    セッションID: k03-23
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    [はじめに] ペンタゴン石とカバンシ石は、いずれもCa(VO)(Si4O10)・4H2Oの組成で、多形の関係をもつ層状珪酸塩鉱物である(Staples et al., 1973)。Evans (1973)は、ペンタゴン石とカバンシ石のバナジウムの価数は、計算によって四価と五価の混在とし、両鉱物ともその配位多面体はVO5正四角錐を形成するとした。しかし、両鉱物のバナジウムの配位環境を正確に調べるには、過去の研究ではR因子が高く(ペンタゴン石は、R=8.1%で、カバンシ石はR=10.9%)、微量元素・水分子を含めた正確な化学組成は決定されていないという問題点が挙げられる。また、酸化バナジウムにおいてバナジウムの価数と配位多面体の関係が明らかにされている。それは、V5+はVO4四面体を形成し、V5+とV4+の混在はVO5正四角錐を形成し、V3+が多くなるにつれVO6八面体を形成する(Peter and Stanley, 1999)ということである。そこで、本研究ではペンタゴン石とカバンシ石に対し、正確な化学組成の決定とバナジウムの価数の測定、結晶構造の精密化を行い、これらの鉱物におけるバナジウムの配位多面体と価数の関係を明らかにすることを目的とし実験を行った。[実験方法] 本研究で用いる試料は、インドWagholi産のカバンシ石とペンタゴン石で、ペンタゴン石はモルデン沸石と共生し、板状自形結晶の集合体を示す。カバンシ石は輝沸石と束沸石と共生した板状自形結晶の放射状集合体を示す。 化学組成は、EPMAを用いて測定し、水分子は示差熱重量分析を用いて測定した。結晶構造の精密化は、単結晶X線構造解析装置を用いて行った。バナジウムの価数は、X線光電子分光分析(XPS)装置SCIENTA ESCA-300を用いて測定した。[結果] EPMAと示差熱重量分析の結果から、カバンシ石・ペンタゴン石ともにほぼ理想化学式の組成を示したが、カバンシ石はAlを微量に含み(約0.3 wt.%)、一方ペンタゴン石はMnを微量に含む(約0.5 wt.%)。また、ペンタゴン石では、Si席にバナジウムが微量に置換した組成を示した。 単結晶X線構造解析の結果、結晶構造の精密化はR因子として、ペンタゴン石は4.3%、カバンシ石は5.9%に収束した。バナジウムの配位環境は、ペンタゴン石では五配位のVO5正四角錐を形成し、カバンシ石では六配位の歪んだVO6八面体を形成することが判明した。 XPSの結果、ペンタゴン石のV2p3/2スペクトルは、V4+のピーク位置にピークを示し、V5+のピーク位置に肩を持つスペクトルを示す。カバンシ石のV2p3/2のスペクトルは、V4+のピーク位置にピークを示し、V3+のピーク位置に肩を持った相対的に低エネルギー側にシフトしたスペクトルを示す。[考察] XPSの結果から、ペンタゴン石は四価と五価のバナジウムを含み、カバンシ石は三価と四価のバナジウムを含むと考えられる。ペンタゴン石において、Si席にバナジウムが置換した組成を示すことと、カバンシ石においてバナジウムが歪んだ八面体を形成することは、V5+がVO4四面体を形成することと、V3+を含むことによりVO6八面体を形成すること(Peter and Stanley, 1999)に起因すると考えられる。
  • 大井 健司, 山中 高光, 野守 寛典
    セッションID: k03-24
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    (Ca0.5Sr0.5)TiO3ペロヴスカイトのAサイトにおける超周期構造をX線構造解析によって明らかにした。(Ca1-xSrx)TiO3 (0 ≤ x ≤ 1) は、斜方晶系に属するCaTiO3と立方晶系に属するSrTiO3のふたつを端物質とし、比較的イオン半径の大きなAサイトのイオンによる固溶体である。これまでAサイトが固溶しているの固溶体の研究はBサイトのそれに比べてあまりおこなわれてこなかったが、過去の本研究室の研究から、種々の x の値におけるこの物質の構造が明らかにされてきた。それによると x = 0.65のときには正方晶の構造を採り、それより x が小さい領域では斜方晶系、x が大きい領域では立方晶系の構造を採る。しかし今回同様の方法によって得られた(Ca0.5Sr0.5)TiO3の結晶のX線写真を撮影した結果、これまで考えられていたa、b、cの各格子にそれぞれ倍の周期を持つことが見付かった。そこでこの結晶をX線四軸回折計によって精密に解析した結果、この物質は実際にはx = 0.5の領域では立方晶系Pm3mの構造を採ることが分かった。これは従来考えられてきたこの物質の相図を大きく書き換えることになる。
  • 麻生 真吾, 瀬戸 雄介, 下林 典正, 北村 雅夫, 廣井 美邦
    セッションID: k03-25
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では偏光顕微鏡・走査型電子顕微鏡・透過型電子顕微鏡を用いて、南アフリカ西部Namaqua産石灰珪質グラニュライト中の珪灰石と、透輝石のラメラ状組織との方位関係と形状を観察した。珪灰石には複数の方向に伸張する透輝石が含まれている。電子線回折の結果、珪灰石は普通に産出する三斜晶系ではなくパラ珪灰石である。偏光顕微鏡による複数方向の観察から透輝石のラメラ状組織は大きく分けてA_から_Dの4つのタイプに分けられる。後方散乱電子回折法によって結晶学的方位関係を調べた結果、AとC、BとDはそれぞれパラ珪灰石の2回回転軸に対して等価な関係にある。パラ珪灰石と透輝石が特定の方位関係を持っていることなどから、高温下におけるパラ珪灰石と透輝石の固溶現象に由来した離溶ラメラであるといえる。接合面におけるミスフィット率は小さい値を示しており、接合による結晶構造の歪みは界面付近の転位で解消されると考えられる。
  • 西山 忠男, 宮崎 一博, 伊東 和彦, 佐藤 博樹, 金澤 英樹, 玉田 攻, 北澤 恒男, 小池 正義
    セッションID: k04-01
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    Ito et al.(2003)において合成されたカンラン石単結晶中に見られる波動累帯構造の詳細を報告し,成因を考察する.これまで2成分系において成長速度の濃度依存性を組み込んだ拡散境界層モデルが提唱されているが,われわれの場合組成変動幅が小さいので問題にならず,既存のモデルでは説明不可能である.ここではメルト中の拡散が2成分系ではなく3成分系で起こると考え,FeOとMgOの拡散係数の大きさが有意に異なる場合はSiO2のアップヒル拡散が生じることを示す.カンラン石の成長によりこのようなアップヒル拡散が生じると,拡散境界層におけるメルト組成は,カンラン石のバルク組成から外れることになり,それにより成長が阻害される.SiO2の濃度勾配が解消され,拡散境界層のバルク組成が再びカンラン石のそれに近くなると成長が再開する.このようなフィードバック機構により波動累帯構造が形成されると考えられる.
  • アルマンド 秀樹 篠原, 杉山 和正
    セッションID: k04-02
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    円筒形種結晶を使った合成石英の欠陥に関してX線トポグラフ法によって解析した。これまで観察されなかった欠陥の少ない成長領域が観察でき、この円筒形種結晶を使用した石英の製造技術の発展が今後期待できる。
  • 阿部 利弥
    セッションID: k04-03
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    エンスタタイトのフラックス合成の結果、オルソエンスタタイト(O-En)とクライノエンスタタイト(C-En)の共存成長が認められた。このことは、プロトエンスタタイト(Proto-En)がO-En領域で準安定に成長した結果と考えられる。また、O-En結晶の表面には、微分干渉顕微鏡による観察の結果、マクロステップに加え、微斜面の成長丘が認められ、層成長により成長したことも確認された。原子間力顕微鏡による詳細観察を行ったが、急冷時の影響と思われる析出物の影響のため、単分子層の検出はできなかった。ただし、50nm程度の間隔のステップ列を認めることができ、比較的薄いステップが密に存在して高温フラックスから成長していることが明らかになった。
  • 新名 俊夫, 柴田 恭宏, 宮原 正明, 地下 まゆみ, 大川 真紀雄, 北川 隆司, 大坪 勝裕, 後藤 裕司
    セッションID: k04-04
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/10
    会議録・要旨集 フリー
    市販のハイアルミナセメント(HAC)にシリカフューム(FS)と解膠剤を添加し、これに水を加え、30℃で24時間養生した試料と、これをさらに110℃乾燥した試料、そして,比較のためHACのみに水を加えて同様に処理した試料について、EPMA及びXRDで微組織の変化及び鉱物変化を調べた。いずれの24時間養生及び110℃乾燥試料ともに鉱物組成に変化があるが、その微組織には変化が認められなかった。FSと解膠剤を加えた24時間養生及び 110℃乾燥試料中には,20μm以上の球状のFSが多く残留していた。その中心部にはアルミナの浸潤が認められ、周囲には針状結晶(Gehlenite hydrates)がよく発達していた。
feedback
Top