日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2004年度年会
セッションID: k08-16
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四国の蛇紋岩体に伴われるawaruite,wairauite及びNi硫化鉱物
*受川 智春皆川 鉄雄
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抄録
 四国に分布する超塩基性岩体に伴われるNi-Fe自然金属やNi硫化物についての詳細な鉱物学的検討は,宮久(1966)による中央構造線に沿う蛇紋岩からのmillerite,Onuki(1980)による黒瀬川構造帯蛇紋岩体産awaruite,heazlewoodite,清久(2003)による中央構造線,清水構造帯の蛇紋岩質炭酸塩岩帯からのmillerite,siegenite,gersdorffite,violarite,pentlanditeの報告がある.しかしながら多くの岩体においてこれらの鉱物は未検討のまま残されている.現在,我々は四国の三波川帯,御荷鉾帯,黒瀬川構造帯,四万十帯に分布する超塩基性岩体に伴われるNi-Co-Fe系自然金属,Ni-Co-Fe系硫化鉱物相を明らかにし,各蛇紋岩体の特徴を知る目的で検討を進めている.まだ未同定のものも多く存在するが,今回はこれまで行った検討結果の概要について報告する. Ni-Co-Fe系自然金属は現在のところawaruite,wairauiteの産出が確認されており,native iron?もchromite中から見出している.awaruiteは高知県岡豊,円行寺など高知市一帯,徳島県木頭村坂州一帯の黒瀬川帯蛇紋岩体や愛媛県鴫山鉱山の御荷鉾帯蛇紋岩から見出され,特に四国の黒瀬川帯蛇紋岩体中に普遍的に生じていることが明らかになった.これらの産状はOnuki(1980)の産状と若干異なり,その大半は蛇紋岩を切るantigolite細脈中に単独であるいはmagnetiteを伴い,淡黄白色,数ミクロンの自形_から_半自形結晶(cube∼octahedron)をなし散在しており,Fe1.7Ni7.2∼Fe0.6Ni3.4のやや広い組成範囲を持つ.wairauiteはCallis and Long(1964)によって記載されたnative elementであり,本報告の肉淵谷産wairauiteは本邦初産である.wairauiteは蛇紋岩化した橄欖岩中にawaruiteと共に数ミクロン程度のcube∼octahedronの自形結晶をなし散在している.Fe:Co(Co/Co+Ni=0.9)はほぼ1:1の組成を示す. Ni-Co-Fe-S系硫化鉱物ではpentlanditeが最も普遍的に産し,検討した全ての岩体から見出されたが,含有率は岩体によって著しく異なる.その大半は黄白色粒状をなしているが,数mm大を越える肉眼的な大きさに達することも多い.しばしばheazlewooditeと密接に共生する.Co量は1∼16wt%と岩体によって異なる. Ni-S系鉱物としてはheazlewooditeとmilleriteが一般的であり,一部にNi7S6の値を持つgodlevskite様鉱物が見出された.heazlewoodite,milleriteは理想的な値を持っており,gaspeite:NiCO3によって一部交代される場合がある. Ni-As-S系鉱物としてはgersdorffite等が少量確認されている. 以上の自然金属,Ni硫化鉱物の大半は産状の検討から,初生的に伴われていたのではなく,蛇紋岩化に伴って生成したと推定される.今回の報告ではこれらNi鉱物の特徴と共に四国産のchromite-magnesiochromite-magnetite系鉱物の特徴についても報告する.
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© 2004 日本鉱物科学会
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