日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2004年度年会
セッションID: k09-21
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HRTEMを用いた炭素質コンドライト中のグラファイト・ポリタイプについての検討
*青木 崇行赤井 純治
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抄録
 炭素質コンドライト中には多様な炭素鉱物が存在する.筆者らは化学的処理により,微少量の炭素質コンドライト試料から炭素鉱物を抽出することに成功し,高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)を用いた観察を行ってきた.その結果,例外はあるがCI,CM2タイプの隕石からは有機物と思われる Carbonaceous Globule や不定形低結晶度グラファイトが,CV3,CO3,C4タイプの隕石からは比較的結晶度の良い板状タイプのグラファイトが主に見出されることが分かった(青木他,2003[1];Aoki et al. 2003[2]; Akai et al. 2003[3]).今回,さらにこのグラファイトについての検討をすすめ,そのポリタイプについて調べた. グラファイトには,炭素六角網平面の積層のしかたにより,六方晶系(Graphite-2H)と菱面体晶系(Graphite-3R)の2つのポリタイプが存在する.常温常圧では2H型が熱力学的に安定であり,3R型は剪断応力などによって積層欠陥として生じるものと考えられている.例えば稲垣道夫他(1977)[4]は,天然グラファイト粉末のメノウ乳鉢による磨砕を行った結果,その初期過程では菱面体晶系グラファイトの割合が増加することをX線によって確かめている. 今回,Allende(CV3),Asuka-882094(CO3),Yamato-693(C4)中の板状グラファイトについてHRTEMを用いて精査した.また,あわせてマルチスライスシミュレーションプログラムMssCによる像検討を行った.その結果,結晶方位,defocus量,試料の厚さ等を変化させた場合の格子像の変化からグラファイト・ポリタイプの判別について示唆を得た. 例えば,Y-693隕石中のグラファイトには,0.34nm の(002)格子像(2H)に,0.21nmの(100)格子像(2H)が見られ,この交差角度から2H型 (あるいは3R型)の判別できる.これらの隕石中からは,両タイプのグラファイトが見出された. X線を用いた解析に比べ,HRTEMでは全体の量比の検討については難があるが,ごく少量の試料で局所的な解析ができるという点が特色としてあげられる.現在,さらに多くの多様な隕石中のグラファイトにおけるポリタイプについて検討を進めており,その結果についても報告する.Ref. [1] 青木崇行, 赤井純治, 牧野州明 (2003) HRTEMによる炭素質コンドライト中の炭素鉱物の多様性, 日本岩石鉱物鉱床学会2003年度年会講演要旨集, 235; [2] Aoki T., Akai J. and Makino K. (2003) HRTEM study of characteristic carbon minerals and globules in carbonaceous chondrites, Abstr. Int. Symp. Evol. Solar Sys. Materials: New Perspect. Ant. Meteor., NIPR, 5-6; [3] Akai J., Aoki T. and Saito M. (2003) Nano to micro minerals in Antarctic carbonaceous chondrites, GCA 67, Spec. Supplement Abstr. 13th Goldschmdt Conf. 2003, A10; [4] 稲垣道夫, 麦島久枝, 細川健次 (1973) 黒鉛の摩砕にともなう構造変化, 炭素, 74, 76-82
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© 2004 日本鉱物科学会
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