高温下における含水鉱物中の水素の挙動に注目し、topaz-OHの単結晶X線回折およびラマンスペクトルの測定を298Kから1173Kの温度領域で行った。室温下のラマンスペクトルには、OH伸縮振動モードに由来する2つの強いピーク(3599cm-1および3522cm-1)および弱いショルダー(3458cm-1)が見られる。これらのピークは温度上昇に伴って互いに重なり合い、873K以上の温度では、スペクトルを複数のピークに分離することは困難になる。単結晶X線回折によって得られる差フーリエ図からも、室温下では2つのピークを認めることができるが、高温下における水素原子付近の差電子密度は1つの大きく拡がった分布を示す。これらの結果は、高温下において水素はH1とH2の間を頻繁に移動し、単独のサイトを中心に激しく熱振動していると理解できる。