日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2005年度年会
セッションID: K1-04
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斜長石(An50±1)多結晶体の弾性波速度温度依存性
*河野 義生石川 正弘有馬 眞
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抄録

 鉱物・岩石の弾性波速度は直接観察できない地球内部を解明するための有用な情報の1つである.近年,我々は下部地殻岩に焦点を当てP波,S波速度測定を行った結果,無水下において斜長石に富む下部地殻岩(ガブロノーライト,輝石グラニュライト)では400℃以上の高温条件下で急激なP波,S波速度低下が起こることを発見した(Kono et al., 2004).ガブロノーライトにおけるP波,S波速度の温度依存性は,1GPa条件下でそれぞれ,400℃以下では-0.8x10-4,-0.8x10-4 km s-1 ℃-1であり,400℃以上では-3.4x10-4,-1.4x10-4 km s-1 ℃-1に増加する.その他の斜長石に富む下部地殻岩においても400-600℃以上の高温条件下で急激なP波,S波速度低下が起こることがこれまでに報告されているが,その原因については解明されていない.本研究では,これらの下部地殻岩すべてに多量含まれる斜長石に注目し,斜長石多結晶体(An50±1)の弾性波速度温度依存性を測定した. 高温高圧実験にはピストン-シリンダー型高圧発生装置を使用し,圧力1GPa,温度25-920℃において弾性波速度を測定した.弾性波速度測定はパルス反射法により行った.振動素子に10°Y-cutニオブ酸リチウムを使用し,P波,S波速度を同時に測定した.測定誤差は±0.35%である. 斜長石多結晶体においても下部地殻岩の結果と同様に,400℃以上において急激なP波,S波速度低下を確認した.P波,S波速度の温度依存性は,それぞれ-1.7x10-4,-0.8x10-4 km s-1 ℃-1から-4.2x10-4,-2.5x10-4 km s-1 ℃-1に増加する.本研究で得られた400℃以上における弾性波速度の温度依存性は400℃以下と比べて2.6-2.9倍高い値である.そのため,400℃以上の高温条件下での急激なP波,S波速度低下は,斜長石に富む下部地殻の地震波速度構造に大きな影響を与えることが予想される.

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© 2005 日本鉱物科学会
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