抄録
近年,刑務所における福祉サービスとの連携は整備されつつある.今後の課題は,福祉サービス利用を希望しない者や罪名や内省状況により福祉サービス提供者が受け入れにくい者への帰住先の確保である.本事例は,放火行為を繰り返し,刑務所へ入所する知的障害のある者で,警戒態勢が強く,福祉サービスの利用は拒否的であった.作業療法では,一貫して安心して過ごせる場を提供した.徐々に現実的な話ができ,他者の助けを受け入れ,前向きな自己主張もできるようになり,出所前には帰住先が確保できた.本報告は,刑務所での作業療法による安心できる場の提供が,どのように役立つのか,作業療法経過を通して明らかにしていく.