抄録
本研究は,転倒減少に向けた外的要因に対しての対策,医療スタッフおよび患者に対する転倒予防に向けた啓蒙活動を実施し,その効果について検討した. 対象は,2008年,2009年,2010年のそれぞれ4-10月に当院へ入院した患者75,955人(延べ人数)とした.方法は,2009年にベッド周辺の環境のチェックを行い,2010年にはベッド周辺の環境のチェックに加えて病棟スタッフに対し転倒予防に向けた啓蒙活動,入院患者には転倒の危険性のある動作を行わないように教育活動を実施した.効果判定は,転倒件数の割合(転倒件数/入院患者述べ数),危険度別患者数,転倒後の骨折の有無を評価し比較を行った.結果,2010年では,2008年,2009年と比較し転倒件数の割合に大きな変化が認められなかった.しかし,危険度の低い患者の転倒数および転倒後の重傷者数の減少が認められた.これらのことから,2010年に実施した取り組みは,転倒予防に一定の効果があったものと考えられた.