-
19 巻
(2017)
2 号
p.
65-74
Hand-held Dynamometerを用いた膝伸展筋力測定の再現性と妥当性についての文献検証
多田 実加, 大森 圭貢, 佐々木 祥太郎, 最上谷 拓磨, 榊原 陽太郎, 宮﨑 登美子
本邦におけるHand-held Dynamometer(以下,HHD) を用いた膝伸展筋力測定方法を文献検証した.医中誌のデータベースを用い,「Hand-held Dynamometer」,「ハンドヘルドダイナモメーター」,「徒手筋力計」のキーワードで文献検索を行った.抽出された文献のうち膝伸展筋力測定方法に関して再現性と妥当性が検討された32文献を対象とした.運動器疾患を有さない対象者において再現性を検討した報告は16文献あり,その内15文献はHHDにベルト固定を併用していた.端座位でベルト固定を併用した測定における級内相関係数は,検者内,検者間ともに1つの論文を除きすべて0.9を超えていた.一方,筋力水準が高い場合,ベルト固定なし条件での再現性は不良であった.同時的妥当性を検討した8文献では,7文献においてベルト固定が行われていた.いずれも等速性筋力測定装置などによって得られた値との間に強い相関関係を認めていた(0.73~0.98).運動器疾患を有する対象者で検討した8文献では,4文献においてベルト固定が併用されており,検者内級内相関係数は0.9を超えていた.ベルト固定を併用していない1文献でも,級内相関係数は0.9を超えていたが,測定された筋力は極めて低値であった.運動器疾患のない対象者においては,端座位でのベルト固定を併用したHHDによる測定方法が選択されるべきである.
もっと読む
-
18 巻
(2017)
p.
1-10
認知症に対する応用行動分析学的介入
山﨑 裕司, 遠藤 晃祥
認知症患者の日常生活動作障害に対する行動分析学的介入について紹介した.応用行動分析学では動作障害の原因を,認知機能や身体機能の問題だけでなく,知識の問題,技術の問題,動機づけの問題から分析していく.知識の問題に対して,間違った手順を修正する口頭指示は無効であった.知識の教示とフェイディングによる介入の有効性が示された.技術の問題に対する介入では,逆方向連鎖化や段階的な難易度設定,プロンプト・フェイディングなどの技法を用いた介入の有効性が報告されていた.動機づけの問題に対しては,強化刺激の整備によって適切な行動を増加させ得ることが示された.さらに,言語指示に従えない重症例に対する介入が4本報告されていた.問題行動に対する介入では,不適切な行動を消去し,それに拮抗する適切な行動に強化刺激を与える介入が実施されていた.多数の先行研究は,認知症を有する対象者に適切な行動を学習させ得ることを示した.応用行動分析学的介入は,認知症患者の日常生活動作能力を改善させるであろう.
もっと読む
-
19 巻
(2017)
1 号
p.
19-23
転倒を繰り返す症例に対する移乗動作練習
牧村 奈穂, 中山 智晴, 山﨑 裕司
著明な視力低下と進行性の右下肢痙性麻痺を呈した79歳女性に対して,車椅子への移乗動作中の危険行動を減少させることを目的とした介入を実施した.拡大した写真と文章によって危険行動と適切行動を教示し,適正な姿勢を確認するための触覚的プロンプトを整備した.移乗動作中の危険行動のチェックシートを作成し,改善状況をグラフ化してフィードバックした.ベースライン期には4-5点を推移していた危険行動は,介入開始から徐々に減少し,9日目以降は0点で推移した.さらに,12日目以降は視覚的教示をなくしたが,危険行動は出現しなかった.本介入中には,明らかな機能障害の変化はなく,今回の動作能力の改善は,適切な移乗動作の学習によって生じたものと考えられた.
もっと読む
Top
J-STAGEへの登録はこちら(無料)
登録
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら