歩行距離の延長が困難であった脳卒中片麻痺患者を経験した.この症例に対して,活動性の強化刺激を約束したルールを導入し,それが連続歩行距離に及ぼす影響について検討した.対象は左放線冠の梗塞により,右片麻痺,注意障害を呈した70歳代男性である.歩行距離のフィードバックと社会的強化を導入したベースライン期における連続歩行距離は60から120mで停滞した.ルールの導入によって歩行距離は介入初日に300mに到達した.そして,10日目に600mに到達し,12日目には希望であったコンビニまでの屋外歩行練習が可能となった.また,介入によって歩行速度,6分間歩行距離,膝伸展筋力,バランス能力の改善を認めた.歩行練習が強く動機づけられることによって歩行距離の延長が図られ,歩行能力や筋力,バランス能力の改善を生じさせたものと考えられた.