高知リハビリテーション専門職大学紀要
Online ISSN : 2435-2543
Print ISSN : 2435-2535
2 巻
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  • 上薗 紗映, 山﨑 裕司, 加藤 宗規
    2021 年 2 巻 p. 1-5
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本邦では,精神疾患患者の長期入院が大きな問題となっている.また,精神疾患を持つ患者も様々な身体疾患を合併する可能性があり,1年以内に患者が退院できなかった理由に日常生活活動能力の低下が17.7%あったとされている.今回の研究では,精神・身体重複障害を持つ患者を対象として,自宅退院に影響を及ぼす要因について検討した.対象は平成27年1 月〜平成30年12月までに当院合併症病棟に入院し,身体リハビリテーションを実施した患者350名である.除外規定は,欠損データがあるものとし,最終的に分析対象となったのは296名であった.入院継続あるいは他院への転院を除き,生活の場に退院となった256名中,自宅退院者は116名(45.7%)であった.自宅退院群を規定する要因についてロジスティックス回帰分析を行った結果,有意であったのは認知症の有無,自宅からの入院か否か,同居家族の有無,入院時Functional Independence Measure(以下,FIM)認知項目得点,退院時FIM運動項目得点であった.これらの内,変化させられる因子は退院時FIM運動項目だけであり,日常生活活動能力を高めることを職務とする理学療法の重要性が認識できた.
  • 松井 剛, 上村 朋美, 山﨑 裕司, 荒井 沙織, 加藤 宗規
    2021 年 2 巻 p. 7-11
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究では,片麻痺患者における下肢運動機能と6 分間歩行距離の関連について検討した.対象は,回復期リハビリテーション終了時点の脳血管障害による片麻痺患者40名(右片麻痺20名,左片麻痺20名)である.これらの対象者に対し,SIASの下肢運動機能テスト,麻痺側・非麻痺側膝伸展筋力,麻痺側下肢荷重率を同日に測定した.6 分間歩行距離と麻痺側膝伸展筋力(rs=0.535),麻痺側下肢荷重率(rs=0.453),SIAS下肢合計点数(rs=0.713)との間に有意な相関を認めた.重回帰分析(ステップワイズ法)の結果,3指標とも有意な因子として選択され,決定係数は0.5774であった.標準偏回帰係数はSIAS下肢合計点数(0.5453)が最も高値を示した.6分間歩行距離は,麻痺側下肢の随意性と筋力,そして麻痺側への重心移動能力によって規定されるものと考えられた.
  • 応用行動分析学的介入の効果
    一本柳 千春, 荒井 沙織, 加藤 宗規, 山﨑 裕司
    2021 年 2 巻 p. 13-18
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
    高次脳機能障害を合併した片麻痺患者のトイレ動作中の下衣操作に対して応用行動分析学に基づく介入を実施し,その効果について検討した.症例は,5名(男性2例,女性3例)の脳血管障害片麻痺患者.年齢は,69.6歳(41-81歳)であった.トイレ動作中の下衣操作を立位保持練習と下衣操作練習の2段階に分けた.立位保持練習は,前回のバランスの崩れた回数を伝えてから開始した.そして,前回よりも回数が減少した場合,データを示して称賛した.バランスの崩れがなくなった後,課題分析表に基づいた下衣操作練習を実施した.介入開始後,全症例で改善が見られ,下衣操作を6日から10日で獲得した.Functional Independence Measureの「トイレ動作」の項目は全症例で5点に改善した.以上のことから,トイレ動作中の下衣操作を自立させるうえで,今回の介入は有効に機能するものと考えられた.
  • 中山 智晴, 佃 匡人, 森 純氣, 山﨑 裕司, 有澤 雅彦, 古谷 博和
    2021 年 2 巻 p. 19-25
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
    超高齢重度片麻痺患者に対して,牽引を利用した起き上がり動作練習を実施し,その効果についてシングルケースデザインを用いて検討した.症例は101歳女性,介入前の左側Brunnstrom recovery stageは上肢・手指・下肢Ⅰレベル,寝返り・起き上がりは,全介助であった.介入では,オーバーヘッドフレームに設置した滑車とロープ,重錘を用いて,側臥位にある対象者の上半身を起き上がり方向へ牽引し,起き上がりに成功させた.そして,段階的に重錘の重量を減少させていった.寝返り練習は,逆方向連鎖化と段階的難易度設定の技法を用いて実施した.寝返りは,初日のうちに監視下で可能となった.起き上がりは,介入から7日目以降,監視下で可能となった.介入中,身体機能に著明な変化はみられなかったことから,今回の介入は寝返り,起き上がり動作の技術を学習させるうえで有効なものと考えられた.
  • 左半側空間無視・右同名半盲・認知症を合併した症例
    上村 朋美, 山﨑 裕司, 加藤 宗規
    2021 年 2 巻 p. 27-31
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
    症例は,認知症と右同名半盲の既往がある70歳代高齢者である.今回,脳血管障害による軽度左片麻痺と左半側空間無視を呈した.病室からリハビリテーション室間の順路(往路:6か所,復路:9か所:ポイント)が記憶できない症例に対して,写真による教示と時間遅延法を用いた介入を行い,その効果について検討した.左片麻痺は軽度で連続歩行には問題がなかった.ベースライン期(28-32病日)では,すべてのポイントで進行方向への誘導が必要であった.介入では,ポイントの写真を見せながら歩行前に順路を確認した.移動時,順路に迷った場合,次の順序で手掛かり刺激を付与した.1つ目の手掛かり刺激は「声かけ(進行方向を口頭教示)」,2つ目は「指差し+写真の提示」を追加した.それでも修正できなかった場合,誘導した.前回よりも改善した場合には,データを示して称賛した.その結果,往路は介入7日目に手掛かり刺激なしで成功し,その後手掛かり刺激は必要なかった.復路は,介入8日目以降,一日の介入回数を2回に増加させることで,介入9日目に手掛かり刺激なしで成功し,その後手掛かり刺激は必要なかった.短期間の介入で順路の学習に成功したことから,今回の介入は有効に機能したものと考えられた.
  • 吉村 未来, 岡田 一馬, 中田 衛樹, 山﨑 裕司
    2021 年 2 巻 p. 33-37
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
    長期間の安静臥床後,遷延性意識障害とPusher現象を呈した80歳代男性の重度左片麻痺患者に対して段階的難易度設定を用いた端座位練習を実施した.第74病日より座位練習を開始.Pusher現象が強く,座位保持は不可能であった.セラピストの介助下での座位保持練習を7日間実施したが,介助量に変化は見られなかった.第82病日から,段階的難易度設定を用いた座位練習を導入した.第1段階は3日,第2段階は1日,第3段階は13日,第4段階は4日,第5段階は15日で通過し,大腿上手支持での座位が可能となった.第117病日時点で意識障害,運動麻痺に大きな変化はなかった.食事動作はスプーンを使用して自力摂取が可能となり,トイレ移乗,ベッド移乗は1人介助で行えるようになった.以上のことから,今回の段階的難易度設定による座位保持練習は,座位保持技術を学習させるうえで有効に機能したものと考えられた.
  • ルール制御理論に基づく介入
    杉野 貴俊, 山﨑 裕司, 加藤 宗規
    2021 年 2 巻 p. 39-43
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
    歩行距離の延長が困難であった脳卒中片麻痺患者を経験した.この症例に対して,活動性の強化刺激を約束したルールを導入し,それが連続歩行距離に及ぼす影響について検討した.対象は左放線冠の梗塞により,右片麻痺,注意障害を呈した70歳代男性である.歩行距離のフィードバックと社会的強化を導入したベースライン期における連続歩行距離は60から120mで停滞した.ルールの導入によって歩行距離は介入初日に300mに到達した.そして,10日目に600mに到達し,12日目には希望であったコンビニまでの屋外歩行練習が可能となった.また,介入によって歩行速度,6分間歩行距離,膝伸展筋力,バランス能力の改善を認めた.歩行練習が強く動機づけられることによって歩行距離の延長が図られ,歩行能力や筋力,バランス能力の改善を生じさせたものと考えられた.
  • 視覚的教示とフィードバックの効果
    東部 晃久, 坂本 雄, 山﨑 裕司
    2021 年 2 巻 p. 45-48
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
    口頭指示によって改善できない足部の引きずりを呈した慢性期高齢片麻痺患者を経験した.症例は70歳代の女性,軽度の右片麻痺と注意障害,短期記銘力の低下を認めた.歩行中,右足部が徐々に後ろに残り,転倒の原因となっていた.この症例に対して,視覚的プロンプトの提示と引きずり回数のフィードバックを併用した介入を週2回実施し,その効果について検討した.ベースライン期での引きずり回数に比較し,介入期の引きずり回数は有意に減少した(p<0.05).また,プローブ期でも引きずり回数は増加しなかった.以上のことから,今回の介入は足部の引きずりを減少させるうえで有効に機能したものと考えられた.
  • 山﨑 裕司, 西田 芽衣, 水田 萌, 柏 智之, 宮﨑 登美子
    2021 年 2 巻 p. 49-52
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究では,レッグプレスマシーンを用いた足関節底屈筋力測定方法によって踵上げ回数と底屈筋力の関連について検討した.対象は,健常成人16名(20.5±0.9歳)であった.底屈筋力の測定にはレッグプレスマシーンを使用し,挙上できた重錘重量と初期負荷重量を加えて最大底屈筋力を求めた.日を変えてレッグプレスマシーンを使用し,体重と同等の重量負荷を加えて最大踵上げ回数を測定した.右最大底屈回数は23.8±7.0回,左は24.0±7.9回であった.右最大底屈筋力は89.2±23.7kgf,左は87.0±24.0kgfであった.右足関節最大底屈筋力体重比は,1.34±0.15kgf/kg,左は1.31±0.11kgf/kgであった.右最大底屈筋力体重比と右最大底屈回数の間には,相関係数0.640の有意な関連を認めた(p<0.05).左最大底屈筋力体重比と右最大底屈回数の間には,相関係数0.720の有意な関連を認めた(p<0.05).左右ともに最大踵上げ回数と最大底屈筋力体重比の間に強い相関を認めたことから,最大踵上げ回数によって最大底屈筋力を予測することは比較的妥当なものと考えられた.
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