抄録
指示理解不可能で危険行動を頻繁に認めた症例に対して応用行動分析学に基づくトイレ動作練習を行い,その効果について検討した.対象は,くも膜下出血,左右大脳梗塞に重度失語症を合併した40歳代の女性である.64病日時点の日常生活活動は全介助,排泄はオムツ対応であり,リハビリテーション評価と訓練が困難であった.トイレ内動作を16行動に分割したうえで時間遅延法と行動連鎖化の技法を用いた介入を65病日から開始した.しかし,誘導拒否が強く継続困難となったため,70病日からは難易度調整の技法を加えた介入を行った.目標行動は,容易な行動要素8つから段階的に行動要素数を増加させていった.その結果,徐々に行動要素を獲得し,約1か月の介入期間でトイレ動作が自立した.介入終了時点での機能評価結果は開始時とほぼ同様であったことから,難易度調整を加えた行動連鎖化の技法は本症例においてトイレ動作の習得に有効であったと考えられた.