抄録
失語症を有する重度片麻痺患者に対して,両下腿を台上に挙上することで寝返りの難易度を下げた動作練習を導入し,その効果について検討した.脳梗塞発症8病日より動作練習を開始したが,課題の理解が得られず動作獲得に至らなかった.12病日より開始した介入では,両下腿を台上に載せ下肢重心位置を上げ,寝返りに有利な状態を作り出した.下肢を台から下ろすことで寝返り動作が完遂されるようになり,動作直後に賞賛を行った.下肢挙上用の台の高さは段階的に下げていった.結果として2日間(13病日)で寝返り動作は自立した.この間の身体機能,他の基本動作,日常生活動作の介助量に変化はみられなかった.以上のことから,失語症を有する重度片麻痺症例に対する本介入は動作学習を促進するうえで有効であったものと考えられた.